【姫路】播州秋祭りに携わる職人にインタビュー 塗師(ぬし)編【株式会社 小田仏壇店】

姫路の秋の風物詩「播州秋祭り」。その裏側を支える職人さんたちを深掘りするインタビュー特集です。
第2弾は、屋台の漆塗りと金箔押しをする「株式会社 小田仏壇店」の塗師(ぬし)さんへお話を伺いました。
屋台の装飾を引き立たせ、調和させるベースづくりともいえる「漆塗り」と「金箔押し」。その工程における、小田仏壇店にしかできない特徴やこだわりとは?
なぜ塗師(ぬし)という仕事を選んだのか?
仕事をする上での苦労や、やりがいなど屋台製作の秘話まで。
そこには祭りにかける熱い思いが詰まっていました。
塗師(ぬし)小田さんにインタビュー
Q. さっそくですが、まずは御社について教えてください
社名のとおり、仏壇・仏具の製造販売がメインの会社です。寺社仏閣の修繕もしています。
揖保郡太子町太田で創業した本家から数えると100余年。
私は4代目になります。
Q. 御社の屋台の「漆塗り」の特徴やこだわりを教えてください
漆は国産のもの、福井と京都の天然漆を使用しています。
日本産の漆は希少で、外国産の漆に比べるとコストもかかります。しかし、屋台の製作に使われる国産の木材には、国産の漆が馴染む。日本の気候や風土にあっていると思います。
漆には粘着性があり、接着剤としての役割も果たします。その性質を利用した「金箔押し」も私の仕事。金箔も漆と同様に国産で、金沢と京都のものを使用しています。金は金沢のものがいいですね。
Q. 屋台製作において「漆塗り」の作業はどのように進められるのですか?
「漆塗り」は麻布を着せる作業から、堅地(下地)付け、上塗りなど、約40以上の行程があります。
下地は「砥の粉(とのこ)」と呼ばれる土と漆を混ぜ合わせたもので、一層付けて乾いたら砥石を使って研ぐ。この工程を20回以上繰り返します。
それから上塗りをして、乾かして研ぐ。これを5層以上重ねていきます。この作業もすべて手作業です。
漆は乾かすのにも時間がかかるため、祭りが終わった10月末に受注したものを、翌年の8月の末まで約1年がかりで仕上げています。
Q. ご実家だったのも大きいと思いますが、なぜこの仕事を選ばれたのですか?
子どものころから、作業する親の姿を横でずっと見てきたのが大きいのだと思います。
「祭り」も小さいころから慣れ親しんできたもの。年に1回、幼馴染が集まって、みんなで屋台を担ぐ。それがいいんです。
学校を卒業して3年ほど外で働いたあとは、自然な流れで後を継ぎました。
Q. この仕事の大変なこと、難しさを教えてください
屋台の漆塗りの難しさは「曲線」ですね。仏壇は平面が多いのですが、屋台はほとんどが曲線で、塗る面積も大きい。
これを手作業で、刷毛(はけ)を使って何層にも均一に塗り重ねていくには、より高度な技術が必要となります。
「金箔押し」は、漆や泥地(砥の粉と膠(にかわ))を混ぜたもの)などを3層重ねたあとに金箔を貼るのですが、彫刻師さんが彫ってくれた繊細な彫りのシルエットを崩すことがないように、細心の注意を払って作業しています。
そして、なんと言っても「蝋色(ろいろ)磨き」と呼ばれる仕上げ工程が難しい。
漆を塗った刷毛目を残さず、鏡面のような艶やかな光沢が出るように研磨をする作業で、漆塗りの最高峰の仕上げと言われています。
最後は手のひらに鹿の角を粉末状にした粉を付けて、手で磨き上げます。これも力任せにしたらよいものでもない。ちょうど良い力加減があります。慣れないころは、手に水ぶくれを作りながら作業しました。
こうして何層にも塗り重ね、研ぎ、磨いて仕上げた艶やかで深みのある黒色は、化学塗料や吹きつけ塗装には出せない、まさに漆ならではの「漆黒」だと思います。
Q. では、やりがいや喜びを感じるときはどんなときでしょうか?
やはり、お客様の笑顔を目にしたときですね。
漆って地味なんですよ(笑)
みなさんの目を引くのは、華やかな錺(かざり)金具や縫いもの。漆にスポットが当たることはあまりない。
でもその華やかさは、漆のベースがあってこそ引き立つものだと私は思っています。
それぞれの装飾を引き立たせるとともに、1つの屋台として調和させる。それが漆の役目なんです。
企業情報まとめ
企業名 | 株式会社 小田仏壇店 |
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住所 | 兵庫県姫路市網干区興浜1366-3 MAP |
定休日 | 1月1日~3日 |
電話番号 | 079-274-1200 |
営業時間 | 8:30~18:00 |
その他 | お問い合わせの際は「姫路みたい」を見た。とお伝えいただくとスムーズです。 |
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