【姫路】播州秋祭りに携わる職人にインタビュー 縫い師編【川村刺繍】

【姫路】播州秋祭りに携わる職人にインタビュー 縫い師編【川村刺繍】
目次

    姫路の秋の風物詩「播州秋祭り」。その裏側を支える職人さんたちを深掘りするインタビュー特集です。

    第4弾は、屋台を美しく装飾する刺繍を製作している「川村刺繍」の縫い師さんへお話を伺いました。

    屋台を美しく装飾する「刺繍」。新調の頻度や、お客様からのオーダーはどのようなものなのでしょうか? その製造工程とは?
    仕事をする上での苦労や、やりがいなど屋台製作の秘話まで。

    そこには祭りにかける熱い思いが詰まっていました。

    縫い師 川村定弘さんにインタビュー

    Q. さっそくですが、まずは御社について教えてください

    当店は、屋台や太鼓台の装飾刺繍を専門におこっています。

    「高欄掛」や「水引幕」のほかに、「ふとん〆」「金網」「伊達網」「昼提灯」「紋」や、乗り子(屋台に乗り太鼓を打つ人)が身にまとう「乗子襦袢(のりこじゅばん)」「頭巾」などの祭礼用衣装を製作しています。

    父の実家は、錺(かざり)金具の制作や修理をおこなう「川村商店」を営んでいます。屋台全体の修理を依頼されたときに、屋台刺繍の修復が必要なケースもあり、この道の職人さんに教えてもらいながら創業したのが「川村刺繍」です。

    「川村刺繍」自体は創業40余年、私は2代目になります。私自身はこの仕事を始めて20年くらい。メインで仕事をさせていただくようになってからは、10年くらいですね。

    屋台の説明.jpg

    Q. 発注方法の想像がつかないのですが、実際のオーダー内容はどのようなものでしょうか?

    はい、発注される皆さん、とても悩まれます(笑)

    オーダー方法には大きく2つあって、1つは既存のデザインの「復元加工」。
    もう1つはデザインから一新する「新図案作成加工」です。

    「復元加工」の場合は、元の見本を参考に復元していきます。
    「新図案作成加工」の場合は、お客様が頭の中で描かれているイメージを細部までヒアリングし、下絵を作成するところから始めます。

    特に最近はほかの屋台にはない、村のイメージや個性に合った一点ものを作ってほしいという「新図案作成加工」の依頼が多いですね。

    Q. 屋台刺繍はどれくらいの頻度で新調されるのでしょうか?

    それは地域によってまちまちです。20年から30年に1回新調するところもあれば、100年くらい同じものを使っているところもある。1つの目安は50年ですね。

    ただ、姫路の浜手の方は極端にサイクルが早く、10年くらいで新調することもあります。

    そういった部分にも、土地柄が表れているのかもしれないですね。

    Q. 屋台刺繍ならではの特徴はありますか?

    播州一円や太鼓台文化のある地域の屋台刺繍というのは、主に金糸を使用し、厚みをもたせるというのが最大の特徴です。

    播州では昔から武者ものも好まれ、数多くの作品が残されています。技法においては、過去、盛んだった地芝居(素人歌舞伎)の歌舞伎衣装の影響を受けていると言われる方もいます。暗い舞台の上でも映えるように、糸が太く、柄が大きいのが歌舞伎衣装の刺繍の特徴です。

    作業風景

    Q. 図柄には何かルールのようなものはあるのでしょうか?

    ルールといいますか、日本刺繍において古来より伝統的に続く「図柄の取り合わせ」というものがあります。たとえば「虎には竹」「獅子には牡丹(ぼたん)」といったものです。

    新図案を考える際は、基本的にはお客様のご要望を取り入れますが、そういった取り合わせなどはアドバイスさせていただきます。

    Q. 色遣いに関しては何かルールのようなものはありますか?

    色遣いに関しては結構自由度が高いですよ。色遣いで個性を出す場合もあります。
    たとえば刺繍を施す布に関しても、お客様のイメージに合う色の布が既存のものの中になければ、染めるときもあります。

    Q. 糸や布はどのような基準で選ばれているのでしょうか?

    当店では、色糸の絹糸を使用します。特に大事なことは「糸撚(よ)り」です。糸屋さんに特注で平糸を作ってもらい作品に応じた色糸を撚り合わせます。金糸、銀糸を撚り合わせたり、色の違う絹糸を撚り合わせたり、撚り方の違いで微妙な違いの「色合い」が生まれます。「金糸」も特注で作ってもらったものを使用する場合もあります。

    刺繍を施す布は主に「羅紗(ラシャ)」や「絹織物」です。用途により厚みを使いわけします。

    過去の刺繍.jpg

    Q. そんな状況の中、川村さんはなぜ「後を継ぐ」という選択を?

    私は後を継ぐことに違和感がなかったからですかね。

    小さいころからずっと親父の姿を横で見て育ってきたので。学校を卒業したら、すぐに「川村刺繍」に入りました。

    Q. 親子で仕事をされる難しさや、ぶつかったりすることはありますか?

    あまりないですよ(笑)

    まずこの道に入ったばかりのときは、何もわかっていない状態ですからね。とにかく与えられた仕事を必死でこなしていきました。

    少しわかってきてからは、自分の意見も出すようになりました。そのときには言わず、今になって形にしていることもあるかもしれないですね(笑)

    ここで、静かにインタビューを見守ってくださっていた、先代である川村刺繍の代表 川村雅美さんにもお話を聞いてみました。

    先代 川村雅美さんの写真

    Q. ここ10年ほど2代目の定弘さんにメインを任せているそうですが、そのきっかけは?

    <雅美さん>
    どんどん新しい風を入れたらいいと思ったからですね。息子も「自分に下絵を描かせてほしい」と言うようになりましてね。平成22年か23年くらいからシフトしていくようになりました。

    Q. 屋台刺繍はどんなところが特に難しいのでしょうか?

    <雅美さん>
    それぞれの屋台や太鼓台に合わせて作っていくことです。人と接触する場合もありますし、祭りの動きも違えば、同じものでも飾り方が違います。

    屋台の全体的な調和も考えれば、刺繍部分だけが目立ってもいけないと思います。

    どれが正解なのか...大きさやバランスはいつも悩みます。

    屋台刺繍の写真

    Q. では、やりがいや喜びを感じるときはどんなときでしょうか?

    <定弘さん>
    それは納品時にお客様の笑顔が見られたときですね。

    完成した「高欄掛」や「水引幕」は、地域の公民館でお披露目されることが多いので、公民館でお客様にお渡しすることも。そのときに地域の人たちの喜んでいる表情が見られます。

    屋台刺繍は、祭りで使われるときは屋台に巻かれたり絞って飾られたりする。それが横1枚に広げられた状態で見られるのも、また良いものですよ。

    会社内観

    企業情報まとめ

    企業名 川村刺繍
    住所 兵庫県姫路市大津区天神町2丁目113 MAP
    定休日 日曜日・祝日
    電話番号 079-237-3639
    営業時間 8:00~19:00
    その他 お問い合わせの際は「姫路みたい」を見た。とお伝えいただくとスムーズです。
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    2020年10月23日時点での情報です。
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