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【加東】"兵庫の酒米『山田錦』生産システム"が日本農業遺産に認定!Vol.4|③JAみのりの組合長に聞く

【加東】
目次

    みのう吉川町農業協同組合、三木市南農業協同組合、加東郡農業協同組合、北はりま農業協同組合が合併して、2000年4月に発足したJAみのり。

    「兵庫の酒米『山田錦』生産システム」の認定地域、兵庫県北播磨・六甲山北部地域においても大きな割合を占める産地を擁し、山田錦の出荷量は日本一のシェアを誇る農業協同組合です。

    そこで、JAみのりの代表理事組合長であり、兵庫県山田錦主産地域農業遺産推進協議会会長を務める竹内千博さんに、日本農業遺産に認定されるまでのJAの取り組みや認定への思いを語っていただきました。

    山田錦のブランド化を推進した「グレードアップ兵庫県産山田錦」

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    JAみのりの代表理事組合長・竹内千博さん。
    三木市、加東市、西脇市、多可町の3市1町をエリアとする農業協同組合として、山田錦をはじめ、黒田庄和牛、播州百日どり、よかわぶどうなどの農産品の流通や営農支援を手掛けています。


    1970年代後半からの吟醸酒ブームによる需要拡大を背景にし、2001年には9,000tを超える生産量を達成したJAみのり管内の山田錦。
    しかし、その後、日本酒の消費減少に伴い、減産を余儀なくされる状況が続いたそうです。

    そこで、JAみのりを含むJAグループ兵庫では「グレードアップ兵庫県産山田錦」と銘打ち、品質の向上や広報活動を大体的に行いました。

    竹内組合長は「まず、生産者が米粒を選別する際に使うふるい目を2.00mmから2.05mmに変更し、JAグループ兵庫管内で統一しました。
    生産者さんにとっては、収量が減るわけですから、かなり大胆な変革と言えます。

    この変革により、未熟粒や砕米などの混入が減少し、粒張り・粒ぞろいが抜群に良くなりました。
    酒米の品質向上は、酒造りに大きなメリットをもたらすうえ、価格は据え置きました。

    当然のことながら反対もありましたが、兵庫県産山田錦のブランド価値を長く維持するために、どうしても必要な措置であることを何度も何度も説明。
    最終的にはご納得、共感をいただき、無事に達成することができました」と当時を振り返ります。

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    背丈が高く、米粒が大きく重い山田錦の刈り入れ前の稲田は、「倒して倒さず」と表現されるうねるような独特の景観となります。

    全国津々浦々の酒蔵訪問や日本酒イベントを開催

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    2016年のIWC「SAKE部門」の審査会は兵庫県で開催。
    審査員など関係者約50名が田植えなどの農業体験をされました。

    2007〜2015年の9年間で、IWC「チャンピオンSAKE」(SAKE部門の最高賞)を獲得した日本酒のうち、6つは兵庫県で栽培された山田錦を使って仕込まれたものです。


    品質向上への取り組みに加え、営業やPR活動にも力を入れたと言います。

    「当時はJAが営業に出ることは、あまりなかったのですが、JAグループ兵庫が一丸となって、しらみつぶしに酒蔵を回りました。
    実際に訪ねてみると、山田錦は仕入れたいけれど、どこで買えばいいか分からなかったなど、流通の問題で逡巡しておられる酒蔵さんもあり、私たちの訪問が功を奏したケースもありました」

    さらに、各地での日本酒イベントを開催するなど、PR活動にも尽力。
    特に、海外の日本酒ブームを力強く牽引したのが、IWC2016年SAKE部門の兵庫県での開催です。

    IWCとはインターナショナル・ワイン・チャレンジの略で、1984年に設立された世界的に最も権威あるブラインドテイスティング審査会の一つです。
    2007年に設立されたSAKE部門は飛躍的に成長し、日本国外で行われる日本酒審査会としては、最大かつ影響力の強いイベントになっています。

    「お酒に対する審査はもちろん、審査員など関係者約50名が、山田錦の田植えや稲刈りといった農作業を体験しました。
    蔵元や生産者さんとの交流を通じて、日本酒と山田錦への理解が飛躍的に進んだと思っています。
    広報という意味でも、非常にインパクトがありました」と竹内組合長。

    このような地道な活動が実を結び、2011年に底を打った生産量は、右肩上がりで増加。
    コロナ禍の影響で再び減少に転じましたが、2023年以降は堅調に生産量を伸ばしています。

    兵庫県産山田錦は歴史ある地域の文化

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    「兵庫県産山田錦は長い歴史を誇る兵庫県の文化。誇りを持って、次世代へ残していきたい」と語る竹内組合長。


    「JAみのりは、三木市、加東市、西脇市、多可町と山田錦の名産地をエリアとする農業協同組合。
    筆頭の特産品と言えば、やはり山田錦なんですね。
    だから、減産というのは、生産者さんはもちろんですが、私たちにとっても相当に辛いことでした」と竹内組合長は、減産を余儀なくされた当時の心境を思い起こします。

    グレードアップ兵庫県産山田錦で徹底した品質向上や地道な営業活動ができたのは、並々ならぬ危機感を抱いたからこそ。
    そこには、経済効果に留まらない、地域への想いがありました。

    「山田錦はただでさえ栽培が難しい品種です。
    JAみのりの管内には約2,100人の山田錦の生産者がおられますが、皆さん本当に熱心に勉強し、さまざまな尽力をされています。
    また、日本酒も圧倒的においしくなっていて、これは酒蔵さんの研鑽の証です。

    このように、兵庫県産山田錦のブランド確立には、実に多くの人々のたゆまぬ努力が積み重ねられています。
    山田錦は単なる酒米ではなく、長い歴史を誇る兵庫県の文化。
    この文化をどう守っていくのかが大切です」と語気を強めます。

    令和のコメ騒動により、酒米から食用米へ転換する農家が増えているというニュースが飛び交う昨今、JAみのり管内では目立った転換は行われていないと言います。

    竹内組合長は、「先ほど、兵庫県産山田錦は文化と申し上げましたが、生産者さんも誇りをもって米作りに取り組んでおられます。
    日本農業遺産の認定は、その文化の担い手として非常に喜ばしいこと。
    しかし、日本農業遺産の認定をゴールとして捉えるのではなく、兵庫県産山田錦のブランド力をさらに強化し、次世代へと継承していけるよう、地域の皆さまと一緒に取り組んでいきます」と締め括ってくださいました。

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    2025年9月9日、兵庫県立三木山森林公園にて、生産者・関係者に向けた日本農業遺産記念シンポジウムが開催されました。

    基調講演は灘五郷酒造組合原料対策委員長の西向賞雄氏が、パネルディスカッションでは、西向賞雄氏と酒米試験地の池上勝氏が登壇されました。

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    組合長のオフィスには、「兵庫の酒米『山田錦』生産システム」の日本農業遺産認定書が置かれていました。

    施設名 みのり農業協同組合
    住所 加東市社1777-1 MAP
    電話番号 0795-42-5141(代表)
    アクセス JR社町駅 車14分
    問い合わせ先 北播磨県民局 加東農林振興事務所
    住所 加東市社1075-2 MAP
    電話番号 0795-42-9422(平日9:00〜17:00)
    アクセス JR社町駅 車10分
    HP 北播磨県民局 加東農林振興事務所【公式HP】
    その他 お問い合わせの際は「まるはりorみたい」を見た。とお伝えいただくとスムーズです。
    2025年11月25日時点での情報です。
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