【加東】"兵庫の酒米『山田錦』生産システム"が日本農業遺産に認定!Vol.3|②地元産の山田錦で銘酒を醸す「神結酒造」

1893年の創業から130年以上、播州を代表する銘酒をつくり続けてきた「神結酒造」。
創業当時から、霊峰五峰山の伏流水をたたえた自家井戸の水で仕込む日本酒が、地元の人々に愛され続けてきました。
全国新酒鑑評会でのべ9回の金賞、モンドセレクションで金賞を受賞など、受賞歴多数の名酒蔵として、愛好家の間でも高い評価を得ています。
山田錦とゆかりの深いその老舗酒蔵を訪ね、6代目の蔵元とともに「神結酒造」を支える専務取締役の長谷川妙子さんに、山田錦と共に歩む酒造りについて、お話を伺いました。
酒米は30年以上、同じ地元農家の山田錦
「神結酒造」の創業は、1893年。
播州の地酒を造り続けて130年以上の老舗蔵です。
最高峰の酒米である山田錦の産地の酒蔵として、日本酒の魅力を発信しています。
大吟醸から純米、本醸造など多彩なタイプの日本酒や季節限定酒はもちろん、自慢の麹を使った麹スイーツといった新商品開発にも果敢に挑んでいる「神結酒造」。
そのほとんどを地元産の山田錦で仕込んでいます。
専務取締役の長谷川さんは、
「神結酒造で使う山田錦は、30年以上にわたって、決まった農家さんから仕入れています。
村米制度の時代は、農家さんと酒造家が一緒になって、品質のよい山田錦を育てたと言われていますが、今はどの農家さんも本当によく勉強されていて、感心します。
30年、40年と詳細な記録を持っておられ、山田錦栽培におけるエキスパート。
昔は、"お酒は神の手で醸される"と言われていましたが、私が感じるのは、まさに"神の手が育てた山田錦"。
毎年、素晴らしい酒米を届けてくれます」と話します。
神結酒造の酒米は、加東市の東条地区の山田錦です。
全国の酒造家が喉から手が出るほど切望する最高品質の山田錦を安定して仕入れられるのは、地元蔵ならではの強み。
だからこそ、酒造りは丹精込めて励むのだと言います。
日本酒の名前としても縁起のいい「神結」という名称は、蔵の裏手にある社のそばに生えた2本の樫の木が、1本の木のように結ばれて見えたことから命名。
きっと神様が結んでくれたものではないかという願いが込められているそうです。
『お酒はここまで美しくなれる』をテーマに
6代目の蔵元とともに「神結酒造」を支える専務取締役の長谷川妙子さん。
大学時代は食品化学に携わり、食品の分析や効能を研究する日々を過ごしたそうです。
現在は専務取締役のお仕事に加え、講演やイベントの協賛など多方面で活躍されています。
長谷川さんは、『お酒はここまで美しくなれる』というテーマで講演を行うことも多々あるそう。
その理由を、こう説明してくれました。
「例えばワインを飲むと、最高級であろうが、テーブルワインであろうが、等しくブドウの味がしますよね?
芋焼酎やそば焼酎なども、飲めば何から作ったかがわかります。
でも、山田錦で醸したお酒の香りは、ふくよかな華やかさの中に奥行きがあって、お米からできたとは想像できないはず。
ここまで洗練された美しい農産加工酒は、世界的に見ても希有な存在ではないでしょうか」
その洗練された風味の秘訣は、なんと言っても質の高い山田錦。
粒張(りゅうばり)が良いと称される山田錦は、粒が大きいうえに肉厚。
神結酒造の大吟醸酒では、原料米を40%まで精米しますが、大粒で砕けにくく、中心部に心白(しんぱく)と呼ばれるデンプンの塊がしっかり残ります。
このデンプンの塊は麹菌が根を伸ばしやすい隙間が多く、吸水性も良いため、アルコール発酵がよりバランスよく進みます。
また、心白の成分は、雑味の素となるたんぱく質や脂質の含有量が少なく、すっきりとした味わいに仕上がるとあって、良質の酒米の条件のひとつは、この心白の発現率です。
「一般的にイネ科の植物の寿命は数年から十数年、種子としての寿命は適切な保存方法でも数年程度と言われています。
開発されて90年近く経つ山田錦は、生物的に珍しいということもありますが、なんと言っても守り続けてきた生産者の技と情熱の賜です。
世の中には、変えなければならないものもありますが、こうして変わらず守り続けることも大切にしなければと、痛切に感じますね」
地元蔵として、農家さんと一緒にこの山田錦を守っていきたいと、長谷川さんは感慨深く話してくれました。
右のお皿に入っているのは40%精米後の山田錦。
保存袋に入った玄米と比べて、大きさが半分以下になっていることがわかります。
山田錦の千粒重(お米1,000粒の重さ)は約27~28g。
一般的な食用米22~23gに比べて大粒で肉厚なので、高精米が可能なのです。
生産者、酒蔵、消費者の3者が揃うことが大切
加東市産山田錦という最高の酒米の魅力を余すところなく引き出した「純米大吟醸 神結」。
芳醇な香りとコク深い味わい、それでいてすっきりとした喉越しが感じられる「神結酒造」を代表する格別なお酒です。
米と米麹、水だけで作る日本酒。
「神結酒造」では、創業当時から水は霊峰・五峰山の伏流水を使用しています。
山田錦を使う前から、飲み口のやさしい淡麗な味わいが愛されていましたが、山田錦を使うことで、さらにクオリティに磨きがかかり、ふくよかで芳醇な風味の格別な仕上がりの銘酒を生み出してきました。
「農家さんからはよく、酒蔵あってこその山田錦とおっしゃっていただきますが、私たちからすれば、生産者さんあってこそ。
酒米は他のものではカバーできませんから。
農家さんと酒蔵どちらが欠けてもおいしいお酒はできません。
さらには、お酒を飲んでいただく消費者がいなければ成り立ちません。
生産者、酒蔵、消費者の3者が揃ってはじめて、酒造りを継続していくことができるのです」
長谷川さんの言葉からは、長きにわたる農家と酒蔵の信頼関係が察せられます。
単なる売り手と買い手という範疇を超えて、お互いへの敬意があるからこそ、洗練された得も言われぬお酒が醸しだされるに違いありません。
しっかりとした酸味、ほどよい甘みにスパークリングの爽やかさが引き立つ「山田錦 スパークリング清酒YUI」や、米・米麹のみを使用したアルコールは0%の甘酒「麹スイーツ Poudre プドレ」など、新たな商品開発にも挑んでいます。
直売所では、蔵の名前を冠した「神結」や加東市の名勝地を名付けた「闘龍灘」などの代表銘柄をはじめ、「神結酒造」の全ラインナップが購入できます。
人の思い出に刻まれた旨い酒には夢がある
昔の酒樽の蓋を利用したテーブルや山田錦のサンプル、歴代総理大臣が揮毫(きごう)した『國酒』の色紙など、酒造りの文化や歴史資料も実見できる直売所。
最高品質の山田錦といえども、農産物である以上、毎年微妙な違いがあるのは当然のこと。
それを見極めて、毎年同じ味わいや香りを出せるのは、銘酒蔵としての技術の高さです。
しかも、時代によって味の好みは変化します。
近年は、柔らかい飲み口で冷やでおいしいお酒が好まれているとか。
そんな消費者の傾向をしっかりつかみながら、酒造りと向き合うことも蔵元としての役目だと言います。
「その人その人に旨いお酒ってありますよね?
それは常に大吟醸とは限らず、思い出に残っているお酒。
楽しい出来事や大切な人との特別なひと時、心に残る場所など、その人の人生の1ページに刻まれたさまざまな記憶と共に楽しめる。
だから、おいしいお酒には、夢があるんですね」と力を込めます。
お客さまから「こんなにおいしいお酒に出会えてよかった」「思い出のある酒蔵さんです」など喜びの声をもらった時は、特に、この蔵を守り続けていきたいと強く感じるそうです。
消費者の声を聞き、生産者と肩を並べて歴史を紡いできた「神結酒造」。
最後に長谷川さんが語られた「山田錦っていうのは、やっぱり地元の誇りです。地元蔵として、この先100年、200年と続く山田錦の酒造りを守っていきたいですね」という言葉が印象に残る取材となりました。
直売所の壁には数々の賞状が展示されています。
歴代の総理大臣は『國酒』と揮毫(きごう)した色紙を日本酒業界に贈呈し、そのレプリカは蔵元にも配布されるそう。
「神結酒造」では歴代総理大臣が筆をふるった色紙が実見できます。
日本各地で水不足が深刻化した2025年の夏も、霊峰・五峰山の伏流水をたたえた自家井戸の水が枯れることはなかったそうです。
また、1月中旬から3月初旬の醸造期間中は酒蔵見学もできるとのこと。
詳細は電話にて直接お問い合わせを。
施設名 | 神結酒造株式会社 |
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住所 | 加東市下滝野474 MAP |
定休日 | (4月~10月)土・日曜日、祝日/(11月~3月) 日曜日、祝日 |
電話番号 | 0795-48-3011 ※酒蔵見学はお電話にてお問い合わせください |
営業時間 | 9:00〜12:00、13:00〜17:00 |
駐車場 | 有 |
アクセス | JR滝野駅 徒歩10分 |
HP | 神結酒造株式会社【公式HP】 神結酒造株式会社【公式Facebook】 |
その他 | お問い合わせ・ご予約の際は「まるはりorみたい」を見た。とお伝えいただくとスムーズです。 |
問い合わせ先 | 北播磨県民局 加東農林振興事務所 |
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住所 | 加東市社1075-2 MAP |
電話番号 | 0795-42-9422(平日9:00〜17:00) |
アクセス | JR社町駅 車10分 |
HP | 北播磨県民局 加東農林振興事務所【公式HP】 |
その他 | お問い合わせ・ご予約の際は「まるはりorみたい」を見た。とお伝えいただくとスムーズです。 |

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