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【加東】"兵庫の酒米「山田錦」生産システム"が日本農業遺産に認定!②日本農業遺産認定の決め手は?

【加東】
目次

    2024年6月に登録申請から数々のハードルを越えて、2025年1月、地域待望の日本農業遺産認定を獲得した"兵庫の酒米「山田錦」生産システム"。

    では、どんな点が認定の決め手になったのか?
    具体的な地域性や技術、特性を解説していきましょう。

    評価ポイント①気候風土:「酒米買うなら土地見て買え」

    加工済_2503_兵庫県産山田錦02_02.jpg

    三木市吉川町の農地整備であらわれた神戸層群の地層。
    粘土質のこの地層が高品質な山田錦を育ててくれます。


    「酒米買うなら土地見て買え」。

    これは、古くから神戸、灘五郷の蔵元の間で語り継がれてきた格言で、酒米の善し悪しは、土地の条件に依存するという考えから来ています。

    良質な酒米づくりの気候条件として、年間を通じて日照時間が長いこと、夜間の温度が低く、昼夜の寒暖差が大きいことがあげられます。

    山田錦の産地は、六甲山系の北側に位置し、温暖で日照時間が長く、降水量の少ない瀬戸内式気候です。

    六甲山系の山々が、夏場の暖かく湿った空気を遮断し、適度な標高(50〜100m)と相まって、昼夜の寒暖差が大きいことが特徴。
    この寒暖差が、大きい心白の発現や稔りを良くすると言われています。

    そして、酒米生産にとって重要な土壌特性も突出しています。

    兵庫県産山田錦の栽培地域の土壌は、新生代古第三紀始新世末から漸新世にかけて形成された「神戸層群」。

    火山灰が堆積してできた粘土質の地層は、肥料や水の保持率が高く、マグネシウムやカルシウムが豊富なので、根ハリが良く、稲の成長に絶好な土壌であることは間違いありません。

    兵庫県北播磨・六甲山北部地域は、地形、気候、土壌どれをとっても山田錦にとって、まさに天国のような環境。

    「土地見て買う」、往時の蔵元の鑑識眼には感服させられます。

    評価ポイント②技と情熱:「倒して倒さず」

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    穂先が地面につきそうでつかない加減で留めるのが腕の見せどころ。
    長年の経験と生産者の情熱が「倒して倒さず」を実現します。


    他の酒米と比べても粒が大きく、重い山田錦は、背丈も高いので、稲が倒伏してしまう可能性が高く、栽培には高度な技術が求められます。

    良質な山田錦の栽培は、「倒して倒さず」と言われ、地面につく寸前まで穂を垂れる姿が良いとされます。

    米粒を大きくするためには、窒素を主成分とする肥料が有効ですが、多すぎると稲が倒れ、少なすぎると栄養不足になってしまいます。

    つまり、質の高い大粒の酒米の条件である、穂先が地面につくかつかないかの状態まで成長させるためには、窒素分の過多を絶妙なバランスで調整しなければならないのです。

    植える時に1回だけ肥料を撒く食用米に比べて、山田錦の施肥は、田植え時期に1回、出穂前に1〜2回と、稲の生育状況を見ながら「倒して倒さず」、タイミングと量を適切に調整することが欠かせません。

    さらに、水の管理もデリケートな山田錦栽培。
    「おいて」と呼ばれる排水のための深い水路の設置や、倒れてしまった稲をおこし、稲同士を結んで成熟させる「株おこし」と呼ばれる作業など、伝統的に受け継がれてきた地域の知恵も酒米の品質を支えています。

    加えて、灘地方の酒造家と生産者の間で交わされた「村米(むらまい)制度」が品質向上に大きな役割を果たしました。

    これは、安定的に酒米を仕入れたい酒造家と、決まった購入先に安定して販売できる生産者(当時は集落)、双方にとってメリットのある先進的な直接契約で明治期にすでに始まっています。

    集落と酒造家の関係は、単なるビジネス上の取り引きにとどまらず、二人三脚的なつながりで品質向上においても協力し合うように。

    長い歴史の中で受け継がれてきた人々の技と情熱こそが、「酒米の王者」と呼ばれるまでの品質を創り上げてきたのです。

    評価ポイント③酒米の価値:「酒米の王者」

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    山田錦の特上ランクを示す印。
    他府県だと、ほぼ幻扱いの階級になるので、この写真だけでも超貴重?


    1923年(大正12年)に兵庫県立農事試験場で交配され、1928年(昭和3年)に品種認定を受けた山田錦。
    良質な酒米として、伊丹や灘五郷といった日本有数の酒どころで重宝され、「酒米の王者」として全国的なブランドになっています。

    では、兵庫県北播磨産山田錦のどこが素晴らしいのか?
    その理由を解説していきます。

    まず、お米には食用米と酒米の2種があることは周知の通り。
    同じお米といえども、この2種は粒の大きさと色がまったく違います。

    というのも、ご飯になった時の粘りや旨味がおいしさになる食用米は、米粒にタンパク質や脂質が多く含まれています。

    一方で酒米は、タンパク質や脂質が雑味の元になってしまうため、タンパク質や脂質は外側に、中心にデンプンが集まるよう品種改良されていて、粒が大きく、中心部に心白(しんぱく)と呼ばれる麹菌が根を伸ばしやすい隙間が多いデンプンの塊があることが特徴です。

    現在、酒米は120種程度あるとされていますが、山田錦最大の優良ポイントは、この粒の大きさと心白の発生率です。

    一般的に50%程度と言われる心白の発生率が、山田錦の場合は70〜80%。
    米粒自体も大きいので、心白だけを取り出す精米を行っても、ある程度の大きさを保つことができ、酒造にはこの上ない品質。

    とりわけ兵庫県産山田錦は、ダントツの評価を得ています。
    酒米には「農産物検査」という試験があり、その結果から特上、特、1等、2等、3等、規格外の5段階にランク分けされます。

    特上・特の上位等級比率が全国平均は4割に対し、兵庫県産はなんと7割!
    さらに、加東市の社地区や東条地区、三木市の吉川地区は、「特A地区」と呼ばれるほどの超優良栽培田地帯。

    兵庫県産山田錦のうち7割程度が特A地区産となっており、全国新酒鑑評会の出品酒の原料に占める割合も6割に達しています。

    全国の名だたる酒造家が熱望するとあって、供給量の面でも全国のシェアが6割と日本一!
    全国の約550の酒蔵にトップブランドとして出荷されています。

    大きな粒と心白の大きさ、低タンパク質・低脂質という、良質な酒米に求められる条件すべてをコンプリートする兵庫県産山田錦。
    まさに「酒米の王者」と呼ばれる地域自慢の農産物と言えます。

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    【加東】"兵庫の酒米「山田錦」生産システム"が日本農業遺産に認定!③

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    問い合わせ先 北播磨県民局 加東農林振興事務所
    住所 加東市社1075-2 MAP
    電話番号 0795-42-9422(平日9:00〜17:00)
    アクセス JR社町駅 車10分
    HP 北播磨県民局 加東農林振興事務所【公式HP】
    その他 お問い合わせ・ご予約の際は「まるはりor姫路みたい」を見た。とお伝えいただくとスムーズです。
    2025年2月25日時点での情報です。
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