大人の遠足・夢前川の源流を訪ねる

大人の遠足・夢前川の源流を訪ねる
夢前川は加古川、市川、揖保川、千種川と並び播磨五川です。 延長38キロメートル、流域面積205平方キロメートルに及びます。 天然記念物「オオサンショウウオ」の生息地であり、ゲンジボタルの棲む清流としてしられています。古くより農業用水として、また生活用水として利用されてきました。 夢前川の源流をつきとめたくて、雪彦山を訪ねました。案内してくださったのは、夢前町の自然を愛する会・会長・山本弘さんです。山を歩いて40年。兵庫県自然保護指導員、環境庁自然公園指導員も務められています。 山本先生をご紹介くださったのは、香寺ハーブ・ガーデンの福岡讓一社長。地元野菜をふんだんに使ったブッフェレストラン夢前町山之内にある農家レストラン
山本先生の車に同乗して、
車を展望台に停めて、山道に入ります。入り口付近の斜面は階段が設置されています。階段を下りきると、登り坂になります。表からの登山口へ下る下山道と分岐する大曲をすぎると、せせらぎが聞こえ始めます。賀野神社、峰山高原の方向を示す標識にたどりつき、ここで小休止。なだらかな傾斜とはいっても、上着は脱ぎ汗だくの状態。シャツまで脱ぎたいくらいでした。
急な斜面を岩づたいに下ると、右手に虹ヶ滝が姿をあらわしました。豊かな水量です。直進すると地蔵岳にいたります。鋭角の岩が道を阻むかのように重なり合っています。ここへ進むといわれたらどうしようと不安になりました。登るのは何とかなっても、とても下れそうにありません。山本さんは右に折れ、川沿いを歩きはじめました。
ほっと一安心もつかの間、川沿いも大きな岩が折り重なっています。カメラを左右の手に持ち替えたり、背中に回したりして、岩にしがみつきながらようやくクリア。登った先は千畳岩が広がっていました。水が低いところへ低いところへと蛇行しながら千畳岩をつたう様は、まるで生き物のよう。渓谷でしか観られない自然の雄姿です。ここで下山するグループとすれ違います。
千畳岩の感動を胸に、さらに上流をめざします。地上から飛び出した木の根っこや、張り出した蔓が助けてくれました。この先がナメ滝です。巨大な一枚岩を流れ落ちる渓流爆で、滝壺は大きな
天然のウォータースライダーを後にして、歩をすすめます。周囲の風景は杉木立に一変し、足元は落葉がつもりふかふかです。清流はどんどん幅をせばめていきます。
果たして、ついに夢前川の源流にたどりつきました。一粒、二粒と岩からしみだす雫。たった一滴が、やがて大河となるとは。自然の命をはぐくみ、私たちの生活をつむぐ夢前川の源がそこにありました。
いまが盛りと咲き乱れるミツマタ、岩陰に可憐な花をひっそりともたげるスミレ。春が訪れた雪彦山を歩いた一日でした。