【姫路在住】世界で活躍する彫刻家・牛尾啓三さんへインタビュー

9月18日現在、姫路護国神社にて開催中の「牛尾啓三彫刻展2020 -国際活動30年の軌跡-」。 イベント主催者の彫刻家・牛尾啓三さんへインタビューしてきました。
作品のコンセプトや、作品にかける思いとは?
今回の彫刻展で展示されている作品の特徴や見方についても教えていただきました。
姫路市内にあるYBS株式会社のアプローチには牛尾さんの作品の1つが展示され、いつでも見ることができます。こちらの作品についてもご紹介します。
彫刻家・牛尾啓三さんについて
牛尾さんは「メビウスの輪」をモチーフにした石のモニュメントを制作する、兵庫県福崎町出身・姫路市在住の彫刻家です。
「メビウスの輪」とは、細長い長方形を180度ねじって、つなぎ合わせるとできる輪のこと。表裏がなく、終わりがない、不思議な形状を題材とした牛尾さんの作品は、海外でも高く評価され、ニューヨークや北欧、シドニー、ドイツなど、世界各国で展示されています。
彫刻家・牛尾啓三さんへインタビュー
Q. なぜ「メビウスの輪」をモチーフにするようになったのですか?きっかけは、娘が幼稚園のときに取り組んだ夏休みの宿題です。短冊を2回ひねって、つなぎ合わせる。それに縦にハサミを入れると鎖状になるという構造だったのですが、それを見て「面白い!」と思ったのです。
そのとき私は37歳。そこから41歳くらいまでの間に「メビウスの輪」をモチーフにしたデザインが次から次に湧き出してきて、紙と鉛筆を片手にひたすら書き出していきました。
でもそれを実際に形にするには、素材が必要。あのときに思いついたものを、その後タイミングが来たときに具現化していきました。構想から実現まで10年かかった作品もありますよ。
どのような点が海外の方にも受けているのでしょうか?
私の作品は、特に海外の数学者の方からの反響が大きいですね。
ある数学者の方から言われたのが「私たち数学者は、数学の世界を"数式"で表します。ただ、この数式は一般の方に理解されにくい。あなたの作品は、数学の世界を一般の方に分かりやすく、視覚的に伝える力がありますね。」と。
数学界にもオリンピックがあります。4年に1回、「国際数学者会議」というのが開かれます。
2006年にスペインのマドリードで国際数学者会議が開催されるとき、会場前で公開制作をしてほしいとの依頼がありました。私は開催の1ヶ月前に現地入りし、制作を開始しました。
すると制作の模様がテレビ放送などを通して毎日のように放映されます。おかげで現地の子どもたちにまで、すっかり有名人になりました(笑)
これからこの国で数学の大きな会合がおこなわれるということを、僕の作品を通して、一般の方に広められたようです。
「『色み』『素材感』『硬さ』『ねばり』がこれから作ろうとしている表現に合っているか?」をチェックポイントにして選んでいます。
石は国内外からコンテナで取り寄せ、常にいくつかストックしています。最近は便利になって、石も海外のサイトから注文したりしますよ。石のネット通販です(笑)
どんな道具を使われているのでしょうか?
はい、1つの石から作っていますよ。
道具は削岩機を使います。のみとハンマーを使うときもありますよ。最後にダイヤモンドを使用したグラインダーで仕上げます。
また、彩色の有無の基準は何ですか?
彩色に使っているのは、建築用の塗料です。
彩色の有無は、ロケーションに合わせて考えます。たとえば海外の広大な土地の一角に展示するとき、大海原を背景にするときなどは、そのスケールに作品が負けないよう鮮やかな彩色を施します。
あと彩色にはもう1つ役割があって、それは作品の内側や隙間を強調したいときです。彩色を施すことで、1つの物体なのに2つのモチーフが組み合わさっているような視覚効果を与え、新しい見え方ができるようになります。
現在開催中の「牛尾啓三彫刻展2020 -国際活動30年の軌跡-」と作品紹介
現在、兵庫県姫路護国神社では「牛尾啓三彫刻展2020 -国際活動30年の軌跡-」が開催されています。展示されている作品は14点。新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、すべて野外に展示されています。

姫路護国神社にて開催【9月12日~9月22日】
先生にいくつかの作品の特徴や見方についてもお伺いしました。
Facebookで「いいね!」が一番多かった作品今回出展している作品を1点ずつ私のFacebookページにアップしていきました。その中で、一番「いいね!」が多かったのがこの作品です。
どこか「しめ縄」とか、厄除けの神事で使う「茅の輪」みたいでしょう? 日本人の記憶に響く力がこの作品にはあります。
「黒色の石」と一言で言っても、たくさんありますが、これは一番上質な黒色をした石を使った作品です。
黒色の中に銀色の雲母が入っていて、シャープで澄んだ黒色をしています。
「メビウスの輪」をモチーフにした私の作品は、雨の日はまた違った表情を見せてくれます。メビウスの輪に落ちた雨水は、面白い流れ方をする。中でもこの作品は、一番面白い。
雨にぬれた石の表面に、まわりの景色が映り込むのも、また風情がありますよ。
ぜひ晴れの日と雨の日、両方で見にきてもらいたいですね。
それは選べないです。作品っていうのは我が子のようなもの。我が子が何人かいたとして、その中から「この子が一番」なんて選べないでしょう?(笑)
「できが良い」「できが悪い」というのはあるかもしれません。それも時とともに変化することがあります。
でも、一方で評価の対象となるのが「アート」。
私は作品を評価される側も、評価する側も、どちらも経験したことがあります。
初見でとってもよく見えても、時間がたってもう1回見てみると「あれ?」と思うこともあります。しかしながら、初見で引きつける力がないと多くの作品の中に埋もれてしまうのもまた事実。初めに与えたインパクトを継続できる力のある作品が、最後に選ばれます。
YBS株式会社のアプローチに常設展示されている先生の作品について
Q. 姫路みたいを運営しているYBS株式会社の「メビウススクエア」のアプローチにも、牛尾さんの作品を展示させていただいております。こちらの作品はどのようなコンセプトで作られたのでしょうか?
壺阪社長と私は高校のときの同級生でね。そのご縁でリクエストをいただきました。
「YBS株式会社は今が転換期である。 女性の登用も積極的におこない、新規事業を立ち上げ、多角化を図っていきたい。 モニュメントを設置する場所は会社のアプローチ。垣根なくオープンな空間に展示したい。」
それを聞いた時に、この作品だと思いました。作品名は『今、翔ばたく時』。
「メビウスの輪」をモチーフにしたモニュメントは、会社側から見ても、道路側から見ても、どちらも表。「無限」「エンドレス」といった意味合いもあります。これからさらなる発展をしていきたいという企業にはピッタリだと思います。
世界中の成功者や先進的な技術を生み出す企業は「アート」を大切にしています。「アート」そのものに機能はない。でも、直感やひらめき、イメージ、感動を与える力があります。
そんな力のある作品をつくれる人や、近未来、来るべき時代を予感させる作品を作る能力がある人が「アーティスト」なのだと思います。
最後に、先生の今後の展望についてお聞かせください。
アフターコロナのあとも「リアルで重たいもの」を作り続けていきたいですね!
今、オンライン化が進んでいますよね。物ごとの伝達には2種類ある。「情報の伝達」と「存在の伝達」。
「情報の伝達」は、どんどんオンライン化していったらいいと思いますよ。でも、アートは「存在の伝達」です。これはオンラインでは伝えきれません。
今後、オンライン化していった先に、相対的にオンラインでは伝えきれない「リアルの価値」が上がる。そんな時代が来ると思いますよ。
イベント情報まとめ
イベント名 | 牛尾啓三彫刻展2020―国際活動30年の軌跡― |
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日時 | 2020年9月12日(土)~22日(火・祝)9:00~17:00 |
会場 | 姫路護国神社 |
住所 | 兵庫県姫路市本町118 MAP |
入場料 | 無料 |
お問合せ先 | 090-3999-9116 |
駐車場 | 有(無料) |
アクセス | JR姫路駅、山陽姫路から徒歩約15分 |
公式HP | 牛尾啓三公式ホームページ |
その他 | 駐車場は境内西側にあります |

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