【インタビュー】姫路労音ベートーヴェン第九合唱団

姫路労音ベートーヴェン交響曲第九は、初演より45周年記念公演を迎えます。
2017年は12月17日(日)、姫路市立文化センターで午後15時に開幕します。
日韓共同の平和な21世紀を創る歓喜の歌が、響きわたることでしょう。
勤労者音楽協議会と姫路労音の歩み
労音の正式名称は、勤労者音楽協議会。「よい音楽を、安く、より多くの人に」をスローガンに会員制の手で運営される音楽鑑賞団体です。 1949年11月に大阪で関西勤労者音楽協議会が結成されたのが皮切りです。波紋はとどまることを知らず、次々に地域単位で誕生しました。姫路労音は1954年全国で11番目に発足した団体です。
時同じくして東京労音が広く市民に呼びかけて労音第九が実現しています。現在において年間200回におよぶ市民合唱団による第九が開催され、年末の風物詩とさえよばれるようになりました。第九が日本で初演された1918年以来、音楽を専門的に勉強した特別な人達のものでした。一般市民による第九合唱など脳裏に浮かぶことさえあり得ませんでした。勤労者音楽協議会と会員一人ひとりの熱い想いが、聞く音楽から参加する音楽へ変化をとげたのです。
1972年姫路市文化センターが竣工し、姫路労音第九合唱団によるベートーヴェン第九交響曲公演の夢がようやく叶いました。東京労音の第九初演から18年の年月が経過していました。姫路労音はさまざまな苦節を乗り越え、2017年は初回公演から45周年の節目をむかえます。これほど長く続いた第九市民合唱は類をみません。逆境においても好機においても、前向きに取り組む姫路第九合唱団の明るい気質がうかがえます。
姫路労音第九合唱団の人々
公演を来月にひかえた姫路第九合唱団の練習にお邪魔させていただきました。練習会場は姫路カトリック教会ザビエル館。扉を開くと圧倒される歌声が館内いっぱいに響き渡ります。力強く、そして繊細な表現。見事なハーモニー。ほんとうにアマチュアの方達なのかと、耳を疑いました。
練習は週一回のペースで、18時45分からの夜の部と、2003年からは14時からの昼の部が加わりました。二部制にしたことで参加者の幅が広がりました。小学生から100歳を超える年齢層、様々な職業や立場の方々で構成されます。姫路市以外の地区からも参加者が絶えません。
今年初めて参加したというAさんは、「いつか第九を歌ってみたいと思っていました。」と語られました。しかし、クラッシックという敷居の高さと、合唱未経験という理由で二の足を踏んでいらしたそうです。「思い切って労音にお電話したら、合唱団事務局の方から温かい丁寧なお手紙を頂きました。」この手紙がAさんの背中を大きくおしてくれたのです。 第九合唱団の募集は6月からはじまり、8月末で締め切られます。7月からソプラノ、アルト、テノール、バスにわかれたパート練習から始まります。この時期に基礎になる発声方法や呼吸方法が指導されます。はじめて参加しても合同練習へ向けてスムーズに移行できるのです。
Dさんは阪神淡路大震災の前年から姫路第九合唱団に参加されています。今年が22回目になる大ベテラン。若い頃から音楽が大好きでコーラス活動を続けてこられました。「労音第九合唱団の魅力は人と人とのつながりですね。」とおっしゃいます。練習場の椅子並べをする準備班、指導の先生方にお茶を用意する接待班、休憩時間にパンやコーヒーを販売する販売班、団員ニュースペーパーのあいさつ文や労音例会の感想を用意する書き物班など、運営に必要な仕事は団員が一人一役で分担します。「まるで大きな家族のようです。」とDさん。心をひとつにして歌うのは、心を通わせて合唱団活動を創ることのようです。
「参加を重ねるごとに、出来なかったことが出来るようになるのが楽しみです。」と話してくださったのは参加6年目のBさん。「歓喜の歌」の意味が参加するたびに理解できるようになるのだそうです。歌うテクニックの向上だけではなく、ベールが剥がれ落ちるように第九の真髄に近づけるのでしょうか。 Cさんもベテランの合唱団員です。第九合唱について「魔物」という言葉を使われました。「知れば知るほど、憑かれたように深みにはまります。」笑みをこぼされます。喜びに浸れる魔物なら、筆者もとりこになってみたいと思った瞬間です。
第九に魅せられた人々を描いたドキュメンタリー映画「ルートヴィヒに恋して」
ベートーヴェンは生涯9曲の交響曲を作曲しました。その中で最後の作品となったのが合唱つき作品番号125の第九交響曲ニ短調です。第四楽章の合唱はシラーの「歓喜に寄せて」という詩との出会いがきっかけになります。フランス革命「自由」「平等」「平和」のスローガンが、「すべての人々は兄弟になる」という歌詞で繰り返されます。ベートーヴェンは楽想に30年の月日を費やします。まさに船中八策のおもいで生み出された最高傑作といえるでしょう。
クラッシックの中でもとりわけ壮大なスケールの第九交響曲。楽聖ベートーヴェンが生涯の作曲活動の集大成といえる作品。第九合唱とかかわる日常を追い描いたドキュメンタリー映画「ルートヴィヒに恋して」は、まもなく完成の予定です。監督は旧ソ連スターリン時代に強制移民させられた高麗人の歴史を描いた「空色の故郷」で注目を集めたキム・ソヨン女史。製作に費やされた時間は3年。2018年の上演がまちどおしい限りです。筆者はプロモーションフィルムを拝見する機会を得ました。登場する姫路第九合唱団の方々は、映画の題名にふさわしく恋する少年少女のようでした。歌い始めると喜びに紅潮する頬、希望に満ちた意志的な瞳、本番直前の緊張と高揚。そして、合唱団員の方々を結びつける人と人との絆、尊厳に基づく魂の開放がそこにありました。それが、第九合唱の魔法なのかもしれません。
2017年のベートーヴェン交響曲第九番は、指揮者に三ツ橋敬子さんを迎え12月17日に公演されます。オーケストラは2003年より15回の競演を重ねる関西フィルハーモニー管弦楽団。ソプラノ・住吉恵理子さん、メゾソプラノ・谷田奈央さん、テノール・松原友さん、バリトン・池内響さんといった国内海外で活躍されているソリストが揃います。合唱は2017姫路第九合唱団と韓国・昌原市市民第九合唱団。会場は姫路市文化センター 大ホール、開場14時30分 開演は15時。
若干の空席はあるようです。チケットをご希望の方は姫路労音へ電話で問い合わせましょう。
姫路労音の住所・電話番号は、下方の表に記載しています。
公演名 | 姫路第九42回公演 |
---|---|
日時 | 2017年12月17日(日)15:00開演(14:30開場) |
会場 | 姫路市文化センター 大ホール |
開催場所 | 姫路市西延末426-1 MAP |
主催 | 姫路勤労者音楽協議会(姫路労音) |
会費 | 会員指定席 :4000円 高校生以下2000円 一般指定席 :5500円 高校生以下3500円 一般当日指定:4500円 高校生以下2500円 |
お問合せ先 | ※079-288-6600 |
駐車場 | 有(有料) |
公式HP | 公式ホームページ |