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【西播磨フードセレクション】ツクリビト連載インタビュー生産者Vol.07 しらはた農園MOTOの『Most』
【西播磨フードセレクション】ツクリビト連載インタビュー生産者Vol.07 しらはた農園MOTOの『Most』
株式会社MOTO
【西播磨フードセレクション】ツクリビト連載インタビュー生産者Vol.07 しらはた農園MOTOの『Most』

南は瀬戸内海から北は奥深い山間部まで、豊かな自然に恵まれた西播磨(相生市、たつの市、赤穂市、宍粟市、太子町、上郡町、佐用町)は、多様な風土が育むバラエティーに富んだ特産物の宝庫です。

西播磨フードセレクション」は、そんな西播磨の農林水産物を使った加工食品のPRや発掘を目的とし、2012年にスタートしました。

素材のおいしさを大切に、食べる人への愛が詰まった受賞食品はすでに73品!
いずれも、作り手のこだわりが満載の逸品がラインナップされています。

そこで、受賞食品のおいしさの秘訣を探るべく、生産者を訪問。
作り手のこだわりや完成までの試行錯誤、熱い想いなどを連載インタビューでお届けします。

第7回は、しらはた農園MOTOのブドウを丸ごと絞ったジュース『Most』です。

谷地ならではの寒暖差と豊かな土壌が育んだブドウ

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赤松区細野は、国指定史跡「白旗城跡」の主要な登山口の一つとなっています。

この城は赤松円心が築いた「一度も落ちたことがない城」として有名で、近年は「落ちない城」として受験生の合格祈願スポットにもなっています。

上郡町の北部に位置する赤松区細野は、清流・千種川沿いに拓かれた地域です。

今回の訪問先は、2019年に赤松区細野に移住し、ブドウ栽培を手掛けるしらはた農園MOTOの代表・田中源道さんです。

田中さんは「この辺りは、山々に囲まれた日当たりの良い谷地。昼間は陽光で暖められた空気が斜面に沿って上昇し、夜には冷えた空気が山肌にそって降りてくる風の通り道になっています」とこの地の風土を説明します。

地形が生み出すこの寒暖差の大きさが、美しく色づいた果実と甘みがぎゅっと凝縮されたブドウを生み出す秘訣。

さらに、「このエリアは数千万年前という遥かな太古の昔、大噴火が起こった火口跡の淵にあたり、火成岩が長年かけて風化した水はけがよい土壌。
山上から清らかな湧水が流れ込んでくるので、ミネラルたっぷりと、ブドウ栽培に理想的な条件が揃っています」と田中さん。

赤松区細野では、この気候風土を生かして、古くからブドウ栽培が盛んに行われてきました。

涼しいブドウ棚の下で遊んだ夏休みの思い出

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しらはた農園MOTO代表の田中源道さんは、「勤め人だった頃とは違い、今はどうすれば美味しいものをつくれるか、自分で決めて、ブドウの世話をして、どう販売していくか。全部自分の責任だから、充実感があります」とブドウ栽培のやり甲斐を話してくれました。

子どものころ、夏休みになると祖父の故郷、岡山県井原市にあるブドウ農園で過ごすのが常だったという田中さん。

「暑い夏の日差しのもとでも、ブドウ棚の下で過ごしていると涼しくて、心地よかったんです。もちろん、自分でもいだブドウは格別においしかった」と当時を振り返ります。

姫路で長年サラリーマンをやっていた50歳を目前に、ブドウ農園をやりたいと思い立ち、山梨や長野、岡山といった名産地を巡って、ブドウ農園を開く地を探しました。

自らが夏休みを過ごしたブドウ農園に近いイメージの候補地を、2年近くかけてようやく岡山県で見つけた頃、上郡町役場から赤松区細野のブドウ農園を見にきてほしいという声がかかったそうです。

それが、高齢化などの理由から生産者が減少した赤松区細野に、一軒だけ残った最後のブドウ農園でした。

赤松区細野で最後のブドウ農園を受け継ぐ

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赤松区細野で伝統的に栽培されてきたマスカット・ベーリーAは、フルーティーな香りと風味、軽やかな味わいが特長。

農園の継承を決め、移住してきた時、地域の人たちから「マスカット・ベーリーAは残してほしい」と言われるほど、地元で愛されてきた品種です。

すでに岡山県で候補地を決めていましたが、上郡町役場の方の熱心な誘いに、足を運んでみることに。

上郡町を訪れると、澄んだ空気に抜けるような空、滔々と流れる清流・千種川。
刈り取り前の黄金色に光る稲穂が風に揺れていました。

ブドウ農園に着くと、ブドウ畑の間を縫うように、幾本もの小さな谷川が流れています。
「ちょうど収穫期だったので、採れたてのブドウをいただいてみたところ、今まで食べてきたブドウとは明らかに違うコクの深さに驚かされました」と田中さん。

それは、この地で古くから栽培されてきたマスカット・ベーリーAでした。
夕日に照り映えるブドウ畑の美しさと、ブドウの格別な風味に魅了され、「この地区で最後のブドウ農園を受け継ごう」と心に誓ったそうです。

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気温がまだ上がらない朝の涼しい時間帯から、美しく色づいたブドウを丁寧に収穫していく田中さん。

数年で畑を倍に拡大し、栽培品種を20種に

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その時々で一番おいしいブドウをボックスに三房入れてお届けするMOTOぶどう。

旬ならではの瑞々しい食感と甘い果汁が楽しめます。

継承したブドウ畑では、マスカット・ベーリーAなど数種のブドウを栽培していました。

田中さんは「もっと色々な種類のブドウを栽培したい」と、2021年には畑をこれまでの倍以上、1haへと広げていきます。

シャインマスカット、ピオーネ、藤稔(ふじみのり)、そして白ワイン用のシャルドネなど、20種以上のブドウ栽培に取り組んでいきました。

しらはた農園MOTOでは、すべての品種をブドウ棚で栽培しています。
日当たりと風通しが良くなるため、糖度が高い高品質なブドウを生産しやすく、病虫害を防いでくれる棚栽培。

一方で、設置にコストと時間がかかるというマイナス面がありますが、「ブドウ畑を大きくする際、ブドウ棚の設置や農道の整備などの普請は、地域の皆さんに協力していただきました」と田中さん。

ブドウ農家を引退した熟練者も多い地域だけに、周囲のサポートも頼もしい支えになっています。

果実丸ごと圧搾した大人のブドウジュース「Most」

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金賞受賞の「Most」、右からマスカット・ベーリーA、シャインマスカット、ピオーネ。

ボトルを振って底に溜まっている旨み成分が結晶化した"オリ"と一緒に飲むと、味わいがより立体的になって、ブドウ本来の個々の持ち味が楽しめます。

※"オリ"とは、果肉や果皮の成分が沈殿したもの

「生食でこれだけの風味なら、果汁にしてもおいしいに違いない」と田中さんは、農園を受け継いだ翌年の収穫から加工にも乗り出します。

試験的に製造した50本のジュースを知り合いのソムリエや友人に飲んでもらったところ、高評価を得て、製品力に自信を深めます。

田中さんは、ワインと同じように果実丸ごと圧搾されるブドウジュースを、「Most」と名付けました。
ワインになる前のブドウ果汁を表す言葉です。

自社農園ですくすく育ったブドウ100%でつくる「Most」は、古くから栽培されてきたマスカット・ベーリーAに加え、シャインマスカットとピオーネをラインナップ。

ブドウを丸ごと絞るので、果肉だけではなく、皮や種由来の成分の渋みやコクが加わり、複雑で奥行きのある味わいが生まれる、まさに大人のブドウジュース。

2023年の西播磨フードセレクションで「Most」は金賞を獲得。
保存料無添加で、ボトル1本にブドウ2房を使った贅沢な味わいが評価されました。

個性的なワインを醸す、小さなワイナリーの開業が目標

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赤松区細野の自然の恵みを生かした、優しくフルーティーで飲みやすい「MOTOワイン」。

しらはた農園MOTOで採れたブドウ本来の味わいが楽しめます。

田中さんは、農園を受け継いだ直後から、ワインも作ろうと決めていました。
それはブドウの名産地を巡るなかで、ブドウ畑とワイン醸造が一対のものだと感じたからです。

現在は、マスカット・ベーリーAを使った赤ワイン2種と瓶内発酵させた微発泡スパークリング、そしてシャルドネで上品に醸した白ワイン4種を定番で提供。
加えて、黒ブドウで醸造する白の「ブラン・ド・ノワール」を2年に1回出しています。

ワイン醸造を初めて8年目を迎える田中さんは、2年後を目処にワイナリーを作りたいと考えています。
その構想は、千種川の畔にあるワイナリーというより、カジュアルなワインの造り酒屋といったイメージ。
小さなタンクをいくつか備え、個性的なワインの醸造を思い描きます。
気軽に立ち寄れて、ワインを飲みながら、ブドウ畑が一望できるロケーションが理想。

そして、そこで提供したいのが発酵途中のワイン「シュトルム」です。
これは、絞った果汁の糖分がアルコール分解される過程で提供するので、ほんのり甘く、酵母のやわらかい風味が味わえます。

「いわば、ワインのどぶろく。ブドウジュース「Most」と醸造したワインのいいとこどりをしたカワイイ味なんです」と田中さんは目を細めます。

発酵途中で味わうタイプのワインとあって、瓶に密閉しての流通はできません。
つまり、ワイナリーでしか味わえない季節限定ワインなのです。

赤松区細野の豊かな自然に育まれ、生産者の愛が詰まった、そこでした味わえない希少なワイン。
近い将来、しらはた農園MOTOの「シュトルム」は、上郡町の新たな秋の風物詩となるかもしれません。

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新しいワインが出来上がると田中さんは、上郡町にある造り酒屋を改装したギャラリー「ひがし蔵」で試飲会を開き、来場者の感想に耳を傾けます。

ワイナリーの開業を目指す目的も、お客さまの声をダイレクトに聞きたいからだそうです。

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休眠期の冬には枝を切り、樹の成長期の初夏にも実に養分が集中するように注意を払い、粒ぞろいのおいしいブドウを育てる田中さん。

赤松区細野の活性化にも貢献するしらはた農園MOTOの進化に期待が寄せられています。

Product 商品紹介

Most
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住所:赤穂郡上郡町細野51
電話:0791-55-9508

Maruhari まるはり掲載号

まるはり2026年3月号