


太子加工合同会社の『太子みそ』
相生市、たつの市、赤穂市、宍粟市、太子町、上郡町、佐用町の4市3町からなる西播磨は、温暖な瀬戸内海から自然豊かな山間部まで。
多様性に富んだ気候風土が育む多種多様な農林水産物に恵まれたエリアです。
そんな西播磨のおいしい農林水産物を使った加工食品のPRや発掘を目的とし、2012年にスタートしたのが、「西播磨フードセレクション」。
素材のおいしさを大切に、食べる人への愛が詰まった受賞食品はすでに73品!
いずれも、作り手のこだわりが満載の逸品が揃っています。
そこで、受賞食品のおいしさの秘訣を探るべく、生産者を訪問。
作り手の思いやこだわり、試行錯誤などを連載インタビューでお届けします。
第4回は、太子加工合同会社が伝統を受け継ぐ『太子みそ』です。
太子町を代表する特産品『太子みそ』。兵庫県産のお米と大豆、赤穂の塩だけで作る安全・安心な無添加の味噌です。
兵庫県南西部に位置する太子町は、年間を通じて温暖な瀬戸内海式気候地帯に属し、比較的平坦な土地が広がっていることから、古くから農業が盛んなエリアです。
今回ご紹介する『太子みそ』も、そんな農業が盛んな風土が背景に。
誕生したきっかけは、1970年代の減反政策の時代まで遡ります。
減反政策でお米が作れなくなってしまった田んぼ。
「さて、何か作れないか?」と、新たに手掛けられたのが大豆。
その加工品として開発されたのが、『太子みそ』でした。
当時のJA婦人部(現:女性会)が、太子町産のお米と大豆、赤穂の塩だけで仕込む味噌は、太子町の郷土の味として親しまれ、一時はみそ会館ができるほどの盛況ぶり。
各家庭でも盛んに作られていた『太子みそ』ですが、時代が進むにつれ便利で簡単な市販品の流通もあり、作り手が激減。
「幻の味噌」と呼ばれるようになってしまいました。
炊きあがった大豆はホクホク。
そのまま食べても、ねっとりとした食感と甘味に驚かされるほどおいしい!
そんな「幻の味噌」が復活を遂げたのは、2004年のこと。
ときは、全国で大規模な市町村合併が行われていた平成の大合併の真っ最中。
住民投票で単独町制の道を歩むことを選択した太子町では、特産品開発が急務となり、白羽の矢が立ったのが、幻の味噌と呼ばれた『太子みそ』でした。
「太子町内の生活研究グループから声がかかって、いろんなグループから7名ぐらいの女性が集まりました。最初はみんなで作ったものを家に持ち帰っていて、ほぼボランティアのような活動。地域の"おかん"たちがワイワイ言いながら始めた感じでした」と当時を振り返るのは、『太子みそ』を製造する太子加工合同会社の代表、福田愛子さんです。
その後、太子町加工グループとして本格的に製造をスタートし、2015年に法人化する頃には、太子町の特産品として、広く認知されるようになっていました。
太子加工合同会社の代表、福田愛子さんは、『太子みそ』が復活した当初から味噌作りに携わってこられたエキスパート。
法人化してから2代目の代表として、地域特産品の製造に尽力しています。
『太子みそ』の甘さの秘訣は、この手作り米こうじの配合が多いこと。
米こうじを作るだけでも4日間の手作業が必要。
手間隙かけたからこそ、素材の旨味が実感できるのです。
『太子みそ』の原材料は、米と大豆と塩の3種類だけ。余分なものは一切入っていないからこそ、素材や製法にはこだわりがあります。
米と大豆は、可能な限り農薬を使わない栽培方法で育てた高品質な兵庫県産を仕入れています。
製造の手始めは、米こうじ作りから。
洗米から始まり、まずは一晩、浸水させます。
翌日、蒸し器で40分かけて加熱したお米を40℃前後になるまで冷まします。
そこに、こうじ菌をかけ、押し揉みしながら、ムラなく混ぜ合わせていきます。
キレイに混ざったら、温度を38〜40℃に設定した発酵器で一晩置きます。
翌日、発酵して米こうじになった塊を手でほぐしたあと、発酵器に戻します。
この工程を2回程度繰り返し、最後に米こうじをキレイに手でほぐして冷ましたら完成。
米こうじが完成したら、お次はいよいよ大豆です。
一晩浸水させた大豆を高圧で30〜40分ほど炊きます。
炊きあがった大豆は、そのまま食べても美味なホクホクの仕上がり。
熱々のまま電動ミンチ機に移します。
大豆を電動ミンチ機で絞り出すと、まるでモンブランのような美しいペースト状に!
現在ある機械は徐々に導入されたとか。
「昔は餅つき機を使って潰していたんですよ」と笑う福田さん。
電動ミンチ機のおかげで、5kgの大豆が5分ほどでペーストにできるように。
ペースト状になった大豆をしゃもじで素早くかくはんしながら冷まします。
最後は、赤穂の塩と米こうじをいれたかくはん機に大豆を加え、混ぜていきます。
その時々で水分量が変わってくるので、固過ぎる場合は「タネ水」と呼ばれる大豆の茹で汁を加え調整します。
すべての素材を混ぜ合わせた状態で見極める、仕上げの水分量調整。
このさじ加減こそが、長い年月の間で培った熟練の技術。
手で触った感触だけで、「タネ水」の量がわかるのだそうです。
かくはん機から貯蔵樽に移す際も、空気が入らないよう手でギュッと押し込めます。
米こうじから始まる1回の仕込みに、まる5日間。
工程はほとんど手作業で行われています。
その後、重石を置き、貯蔵庫で10ヶ月保管。
ようやく『太子みそ』は完成します。
自家製の米こうじと太子町産山椒の実、味噌たまり醤油で仕上げた『山椒こうじ』も西播磨フードセレクションで金賞に輝く逸品。
ほか、「唐辛子こうじ」「柚子こうじ」を加えた商品は、"太子こうじ3兄弟"がキャッチフレーズ。
大地の恵みを受けた自然素材だけを使用し、丹精込めて手作りされた『太子みそ』。
大豆のふくよかな風味と米こうじの甘味が濃厚に感じられる格別な味わいです。
安全・安心なうえ、おいしさも比類のない完成度とあって、兵庫県認証食品に認証。
2015年度の西播磨フードセレクションでは、金賞を受賞しました。
また、福田さんたちは、太子町のニンニクと『太子みそ』を使った「にんにく味噌」や自家製米こうじを使った加工品の開発にも取り組んでいます。
中でも、太子町産の新鮮な西はりま山椒を使った『山椒こうじ』は、そのまま食べられる秀逸な調味料。
自家製こうじのまろやかな旨味に、爽やかな山椒のピリッと感が絶妙なアクセントに。
たまり醤油のコクもほどよく、卵かけご飯やとんかつ、餃子やピザとの相性も抜群!2019年に西播磨フードセレクションで、『太子みそ』と同じく金賞を受賞。
福田さんは、『太子みそ』以外の加工品を手掛ける理由を「長年、味噌作りに携わってきて、やはり太子町の特産品を守りたいという思いは大きいですね」と話してくれました。
大豆と同じく、水田の転作作物として栽培が始まった太子いちじくも兵庫県認証食品に認められた太子町の特産品。
福田さんたちは、そのいちじくを加工したジャムの製造も行っています。
地元の小学校で定期的に開催する「みそづくり教室」や「ジャムづくり教室」。
子どもたちからのお礼の手紙が事務所いっぱいに飾られています。
2015年に法人化した太子加工合同会社ですが、地産地消や食育の大切さを広める活動にも積極的に取り組んでいます。
特に地元の小学校で定期的に開催する「みそづくり教室」や「ジャムづくり教室」は、子どもたちにも大好評。
「『太子みそ』は仕込んでから10ヶ月寝かせるので、3年生で作って、4年生になって渡すんですよ。1人500gくらい。子どもたちがとても喜んでくれて、私たちの励みにもなります」と福田さんは顔をほころばせます。
最後にこれからの目標は?との問いに福田さんは、こう答えてくれました。
「とにかく続けていくことです。太子町の特産品を守りたい、絶やさないようにしたい。そのためには、作り手が必要です。小学校での教室や地域活動を通じて、少しでも私たちの活動に賛同してもらえる人が増えることを願っています」
地元の食材を使い、丁寧に、愛情を込めて手作りされる安全・安心な加工品の数々。
太子町や姫路市内の一部スーパーや道の駅などでの販売のほか、ふるさと納税でも購入できます。
自然の恵みを受けた素材そのものの滋味豊かな風味に心も癒やされる、太子町の"おかん"の味をぜひ、一度お試しください。
『太子みそ』や『山椒こうじ』など、太子加工合同会社で手掛ける加工品。
Product 商品紹介

住所:揖保郡太子町福地546-4
電話:079-278-2138

住所:揖保郡太子町福地546-4
電話:079-278-2138