地場産品/ツクリビト Local products

【西播磨フードセレクション】ツクリビト 連載インタビュー 生産者Vol.03『いまい農場のプリン』
【西播磨フードセレクション】ツクリビト 連載インタビュー 生産者Vol.03『いまい農場のプリン』
いまい農場
【西播磨フードセレクション】ツクリビト 連載インタビュー 生産者Vol.03
『いまい農場のプリン』

温暖な瀬戸内式気候の赤穂市、相生市、たつの市、太子町から川や山など自然あふれる宍粟市、上郡町、佐用町と多様性に富んだ気候風土が見られる西播磨は、多彩な特産物の宝庫です。

そんな西播磨の豊かな自然が育んだ農林水産物を使った加工品の発掘やPRを目的に、2012年に発足したのが「西播磨フードセレクション」。

素材のおいしさを大切に、食べる人への愛が詰まった受賞食品はすでに73品を数え、創意を凝らした逸品が揃っています。

そこで、受賞食品のおいしさの秘訣を探るべく、生産者を訪問。
作り手の思いや試行錯誤、開発秘話などを連載インタビューでお届けします。

第3回は、宍粟市の「いまい農場」が手掛ける『いまい農場のプリン』です。

千種川の清流や森林など、宍粟市の大自然が育む特産物

加工済_2503_西播磨セレクション_いまい農場_03.jpg

いまい農場は、美しい山々に囲まれた宍粟市千種町で自然養鶏を営んでいます。

「森とともに生きるまち宍粟」というキャッチフレーズの通り、兵庫県最高峰の氷ノ山をはじめ、1,000mを超える山々に囲まれた宍粟市は、四季折々の美しい自然の風景が心を潤す風光明媚な森林王国です。

一級河川揖保川・名水百選に指定されている千種川の清流は、山々に降り積もった雪が、春にはミネラル豊富な雪解け水となり、地酒や手延べそうめん、川魚などの特産物に活用されてきました。

また、寒暖差の大きい気候を利用した農作物も豊富。自然薯や米、ブルーベリー、イチゴなど、数多くの生鮮や加工品が宍粟ブランドに認証されています。

今回訪問する「いまい農場」も、そんな自然の恵みを生かした自然養鶏を営む農家。
標高1,000m級の山々に囲まれ、全面積の89%が山地の宍粟市千種町に位置し、すべて国産の自家配合飼料と千種川の源流水でニワトリを平飼いしています。

健康な親鶏から生まれた濃厚でまろやかな卵で作る『いまい農場のプリン』が、今回ご紹介する受賞食品。
そのおいしさの秘訣を、オーナー夫妻である今井和夫さんとプリンの開発を手掛けた今井ひさ代さんに伺いました。

こだわりの自家配合飼料と千種川の源流水で元気に育つ親鶏の卵

加工済_2503_西播磨セレクション_いまい農場_04.jpg

できる限り近隣で集められる素材だけで、労をいとわず手作りする自家製の飼料は国産100%。

いまい農場は、地面で放し飼いにする平飼いで約800羽のニワトリを飼育し、卵と鶏肉の生産を行っています。

オーナーの今井和夫さん(以下:和夫さん)は、「おいしくて、安全な卵を産んでもらうためには、まず親鶏の健康が第一。抗生物質などの薬剤はもちろん、防腐剤、遺伝子組み替えが心配な輸入トウモロコシ、黄身に色を付ける着色料なども一切使っていません。すべて国産の安全な飼料を集めて、自家製のエサを与えています」と話します。

まず、主原料である穀類は、酒造用酒米を削った酒造米ぬか。
タンパク質は大釜で炊いて、ミンチの機械でつぶした宍粟市産の黒豆。
ミネラルたっぷりな日本海の天然ワカメなど、人が食べても大丈夫なくらい、栄養バランスに配慮した安全な飼料を独自で調合しています。

さらに、調合したエサ全体をEM菌で発酵させることで、消化吸収を高め、免疫力を増進させます。
腸内環境が整うので、糞尿の匂いも抑制されるのだそうです。

そして、ビタミンやミネラルを補給する草も欠かせません。
カルシウムやβ‐カロテン、ビタミンCも豊富な小松菜の外葉など、食物繊維もしっかり与えています。

卵の約75%は水分とあって、意外にも味の決め手は給水用の水だといいます。
いまい農場では、なんとイワナも獲れる日本名水百選にも選ばれた千種川の源流水を与えていると言うから驚きです。

「ニワトリは水を飲む時、口の中に残ったエサを全部吐き出してしまうので、すぐに水が濁ってしまうんですね。そこで、清流から直接パイプをつないで、かけ流しの水場を作りました。常に清潔で、ミネラル豊富な水を飲んでいる、ウチのようなニワトリは全国的に見ても珍しいかもしれませんね」と笑う和夫さん。

加工済_2503_西播磨セレクション_いまい農場_05.jpg

効率化のため、窓なしの鶏舎が主流の中、いまい農場は開放鶏舎で飼育。
ストレスもないから、真冬の寒さでも元気いっぱい!

着色料・保存料なし!レモン色の黄身は安全安心の証左

加工済_2503_西播磨セレクション_いまい農場_06.jpg

着色料やトウモロコシを使っていないので、黄身の色は薄いレモン色。
安全でおいしいと評判の自慢の卵です。

現在の飼育鶏は、ボリスブラウンというアメリカのハイライン社で育種開発された鶏種。

温厚な性格で傷つけ合うこともなく、産卵率の高さや病気に強いなど、平飼いにはぴったり。
しかも、黄身がしっかりしていて白身の盛り上がりも高く、卵殻色が均一で濃い、品質の高さも魅力でした。

もともとの品種のポテンシャルに加え、今井さんご夫妻がこだわり抜いた飼料と水、開放鶏舎での放し飼い環境、澄んだ大気の中でのびのびと育ったニワトリは健康そのもの。

和夫さんは「みなさん薄い黄身の色に驚かれます。でも、輸入がほとんどのトウモロコシや着色料を使っていない自然な卵は、与えた草がつくるレモン色なんです。ウチの卵は黄身を箸でつまんでも破れません。白身はぷっくり盛り上がり、弾力もしっかり。卵臭さがなく、まろやかでコクも濃厚です」と胸をはります。

卵かけご飯はもちろん、目玉焼きにしていただくと、その違いは一目瞭然!
安全安心な極上卵の際立ったおいしさは、宍粟市千種町の豊かな自然と今井さんご夫妻の手間隙かけたこだわりの飼育が秘訣であることは間違いありません。

とろとろ食感とやさしい自然のコクが絶品のプリン

加工済_2503_西播磨セレクション_いまい農場_07.jpg

宍粟市の豊かな自然が育んだ卵のおいしさをたっぷり詰め込んだ、「純」で「濃厚」なプリン。

いまい農場では20年ほど前に、パウンドケーキとプリンを作っていましたが、養鶏業の方が多忙になり、長らく加工品づくりは中断していました。
そこに、今井ご夫妻の三女、美木子さんがサポートを申し出てくれたそうです。
当時、三人の子育て中だった美木子さんは、元保育園栄養士。得意分野を活かせるうえ、フレキシブルに働ける場にもなることからプリンづくりを再開。

そして、ちょうどその時に「西播磨フードセレクション」応募の話が持ち上がりました。

開発を手掛けた奥様の今井ひさ代さん(以下:ひさ代さん)と美木子さんは、「とにかく卵のおいしさを伝えたかったので、やはりメニューは卵本来の味が活きるプリンにしました。20年前は一般的なレシピ通りで作っていましたが、出品する以上は他では味わえない、いまい農場の卵だからできる品質を目指しました」と当時を振り返ります。

卵以外の原材料は、あと口がさっぱり仕上がるてんさい糖と、生乳本来の風味が濃い兵庫県産の低温殺菌牛乳、少量の北海道産の生クリームのみ。
香料や添加物は一切使っていません。
卵は黄身の割合を多くし、濃厚さを出すなど、配合には試行錯誤を重ねました。

最も苦労したのは加熱方法。
「焼いたり蒸したりでは、目指す滑らかさには届かなくて...。手間はかかりますが、湯煎調理でゆっくり火入れすることで、とろとろ食感を実現することができました」とひさ代さん。
0.1℃毎に温度設定ができる業務用の湯煎機で、ベストな温度を探り、試行錯誤の繰り返しにより完成したのが、『いまい農場のプリン』です。

2021年の「西播磨フードセレクション」では、見事グランプリを受賞。
固体と液体のちょうど真ん中のような滑らかで、とろっとろの舌触り。
やさしい自然のコクがあり、キャッチフレーズどおりの「純」で「濃厚」な風味が堪能できる逸品に、文句なしの受賞となったそうです。

加工済_2503_西播磨セレクション_いまい農場_08.jpg

『いまい農場のプリン』は1個400円、進物用は4個入り1,840円〜。プラス送料でネット注文ができます。

地域循環と自然との共生により持続性の高い農業を目指す

加工済_IMG_9314.jpg

今井和夫さんは宍粟市の市議会議員も務め、地域活動にも精力的に参加されています。
5月には退任される予定で、今後は千種町の活性化に向けた活動を続けていかれるとか。

いまい農場の開設は1989年。
それまで大阪で中学校の教員をされていたご夫妻が、宍粟市千種町に移住して、新規就農されました。

入植地をいろいろ探していた時期、「全国自然養鶏会」への参加をきっかけに、つながりができたのが千種町の農家さん。
そして、鶏舎の土地が見つからずに困っていた時に声をかけてくれたのは当時の町長さんなど。
千種町で暮らす温かな人々のサポートを得て、いまい農場はスタートを切ることができたそうです。

酒造米ぬかは酒造用酒米を精米した後の残り、小松菜も出荷時に取り除く外葉など、ロスを有効活用した飼料用素材も、地元の親しい農家や業者から分けてもらうそう。
わざわざ物流コストをかけて、遠方から取り寄せるのではなく、地域で循環させる、まさに地に足がついたSDGsの実践と言えます。

「自分たちだけでいくら頑張っても点にしかなりません。点と点がつながって、面になる。面と面を連携させて地域で循環していくことが大切です。千種町の豊かな自然と共生しながら、未来へつながる循環型農業を目指していきたいですね」と今井ご夫妻は力を込めます。

『いまい農場のプリン』はネットからの注文も可。
「道の駅みなみ波賀」などの道の駅でも購入できます(売り切れの場合もあり)。

食に関する取り組みに共感してファンになる人も多いという安全安心なプリン。
宍粟市の豊かな自然が育んだやさしい風味を、ぜひ試してみてください。

Product 商品紹介

プリン
プリン
いまい農場
住所:宍粟市千種町岩野辺1065
電話:0790-76-2618

Maruhari まるはり掲載号

まるはり2025年3月号