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手造りに秀でる技なし下村酒造店【シリーズ播磨日本酒絵巻】

手造りに秀でる技なし下村酒造店【シリーズ播磨日本酒絵巻】

おさめ

ホタルと紫陽花の里「安富(やすとみ)」に真正面から日本酒造りにとりくむ蔵元がある。流行りに迎合することも、合理化に走ることもない。明治17年初代蔵元下村九郎兵衛(くろべえ)創業以来「手造りに秀でる技なし」の家訓を守り通してきた。

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伝統の技「佐瀬(させ)式圧搾」


「うちは創業以来、佐瀬(させ)式で上槽するのです。」と、下村酒造店の酒造りを話してくれるのは、7代目蔵元の下村元基(しもむらもとき)氏。 上槽とは、熟成した(もろみ)を酒と酒粕に分ける作業をさす。藪田式と呼ばれる自動圧搾が一般的になっている。アコーディオンの蛇腹を大きくしたような圧搾機に醪を流しこみ、両側から圧力をかけて酒を搾る方法。短い時間でしっかり搾れ、酸化がおこりにくく、酒の採れ高が多いという利点がある。酒粕はスーパーマーケットや量販店などで見かける板状になる。

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醪を縦横50センチ、20センチくらいの酒袋に移しかえ槽といわれる枠に並べ、上から圧力をかけて圧搾するのが佐瀬式。槽が船の底にているところから、「ふね搾り」や「ふな搾り」とも言う。一つずつ袋に詰めて、槽に並べるのは重労働であり、大変手間のかかる作業でもある。上からゆっくりと圧力をかけるので搾取時間もかかる。上槽に時間がかかるため、酒の酸化を抑える高い技術が要求される。

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「下村酒造所では、丸二日かけます。」 佐瀬式で搾られた酒は、日本酒本来の特色がよく引きだされ、雑味が少ない。時間差で荒走り、中取り、責めといった味合いの変わる酒が搾れる。酒質の違う魅力的な日本酒になるわけだ。実際に日本酒鑑評会に出品される日本酒は、よりゆっくり時間をかけた搾り方をする。酒袋を吊るし、自重だけで染み出てくる雫を採取する。市場に出回ることはごく稀で、「雫しぼり」または「雫とり」とよばれている。浅い春に下村酒造店の店頭を飾る「奥播磨 袋吊り雫酒・責め」がそれにあたる。

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「瓶火入れ」と熟成

酒には菌や酵素が生きていて発酵しつづけるため、搾った後に火入れが施される。60度から65度に加熱することで、酒に残った菌は死滅し酵素は死活する。味が安定し、常温での流通や保存が可能になる。一般的な火入れには「プレートヒーター」が使われる。パイプに通した生酒を外部からお湯で加熱する方式で、蛇のようにくねくねと折れ曲がった配管は蛇管(じゃかん)と呼ばれている。タンクからくみ上げられた生酒は蛇管(じゃかん)を通る間に殺菌され、タンクに貯蔵される。

火入れは酒の劣化を防ぐ優れた技法だが、搾りたての爽やかな味が失われるという一面を持っている。鮮度と安定を両立させる方法に「瓶火入れ」がある。酒を入れた瓶ごと殺菌する方法だが、単純にみえて実に手間がかかる。内部まで殺菌に適切な温度にするために、水から湯を沸かす必要がある。殺菌後は瓶の破損を防ぐため、ぬるま湯、冷水、氷水の順に冷却していく。ぐずぐずしていると余熱により日本酒の味が悪くなる。すばやく、しかも均一に冷やすために、瓶をたえずくるくる回転させながらの作業になる。 「下村酒造店の火入れ酒は7種類です。すべて瓶火入れで1年以上熟成させています。」

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高いクオリティ 優れた再現性

通常火入れは、貯蔵用タンクに入れる前と瓶詰めのときの2回行われる。生貯蔵酒と書かれているものは、貯蔵前の火入れをせず、瓶詰め時に火入れされたものをさす。生詰め酒は、貯蔵タンクに入れる前に1回火入れした酒。火入れを全くしないものを生酒という。下村酒造店では、15種類の春夏秋冬の限定商品に3種類の通年商品を加え18種類の生酒がある。生酒の種類も多いが、もっと驚くのは20年間変わらないということ。

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7月11日に、夏を彩る純米吟醸「深山霽月(みやませいげつ)」が2018年のお披露目をする。山奥深い森にふりそそぐ鮮やかな雨上がりの月という意味合いだろうか。日本酒度プラス6の超辛口ながら、ほのかに甘く、ゆるやかな酸味が後から追ってくる。夏の山野草に似た苦味が絶妙な味わい深さを添える。7月28日の満月を肴に杯を傾けるのはどうだろうか?きっと、銘酒の名どおり曇りの一点もないさっぱりした心境を味わえるだろう。

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安富町産「兵庫夢錦」と林田川の水

「うちの蔵で造るのは、年間600石程度です。」日本で一年間に生産される清酒はおよそ2700万石。兵庫県下で日本酒の有名どころ灘の一蔵元生産高は5430石に達するが、全国平均生産量は870石という統計がある。決して大きな蔵元と言えないかもしれない。

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芳醇な酒ができるともてはやされる山田錦収穫高の6割を占める兵庫県下にありながら、下村酒造店は兵庫夢錦を使う。作付面積は山田錦の50分の1に過ぎないが、生産の中心は膝元の安富町。 「地元の米なので、水との相性がいいのです。」特に麹造りに違いがでるという。下村酒造店では兵庫夢錦を約70パーセント採用している。酒造りにたずさわる杜氏は5人。家訓である手造りの技、地産の酒造好適米と水そして気候、蔵人の和。それらが結集して下村酒造店の名酒が誕生する。

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日本酒は奥播磨に限ると言いきる人がいる。華美な衣装をまとい、挑発的に人の心をくすぐるわけではないが、楚々として台所の隅にたたずんでいる女に似ている。そして立ち振る舞いや、何気ない言葉の端に洗練された趣がある。酒好きを虜にしてやまない下村酒造店の地酒の秘密に少しだけ近づけた気がした。



蔵元名
株式会社下村酒造店
住所
兵庫県姫路市安富町安志957 MAP
直営本店定休日
年中無休
電話番号
0790-66-2004
直営本店営業時間
月曜日 ~ 土曜日 : 10:00~18:00
※日曜日は17:00閉店
ホームページ
下村酒造店公式ホームページ
駐車場
店舗前無料駐車場5台
大型車駐車可

ホタルと紫陽花の里「安富(やすとみ)」に真正面から日本酒造りにとりくむ蔵元がある。流行りに迎合することも、合理化に走ることもない。明治17年初代蔵元下村九郎兵衛(くろべえ)創業以来「手造りに秀でる技なし」の家訓を守り通してきた。

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伝統の技「佐瀬(させ)式圧搾」


「うちは創業以来、佐瀬(させ)式で上槽するのです。」と、下村酒造店の酒造りを話してくれるのは、7代目蔵元の下村元基(しもむらもとき)氏。 上槽とは、熟成した(もろみ)を酒と酒粕に分ける作業をさす。藪田式と呼ばれる自動圧搾が一般的になっている。アコーディオンの蛇腹を大きくしたような圧搾機に醪を流しこみ、両側から圧力をかけて酒を搾る方法。短い時間でしっかり搾れ、酸化がおこりにくく、酒の採れ高が多いという利点がある。酒粕はスーパーマーケットや量販店などで見かける板状になる。

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醪を縦横50センチ、20センチくらいの酒袋に移しかえ槽といわれる枠に並べ、上から圧力をかけて圧搾するのが佐瀬式。槽が船の底にているところから、「ふね搾り」や「ふな搾り」とも言う。一つずつ袋に詰めて、槽に並べるのは重労働であり、大変手間のかかる作業でもある。上からゆっくりと圧力をかけるので搾取時間もかかる。上槽に時間がかかるため、酒の酸化を抑える高い技術が要求される。

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「下村酒造所では、丸二日かけます。」 佐瀬式で搾られた酒は、日本酒本来の特色がよく引きだされ、雑味が少ない。時間差で荒走り、中取り、責めといった味合いの変わる酒が搾れる。酒質の違う魅力的な日本酒になるわけだ。実際に日本酒鑑評会に出品される日本酒は、よりゆっくり時間をかけた搾り方をする。酒袋を吊るし、自重だけで染み出てくる雫を採取する。市場に出回ることはごく稀で、「雫しぼり」または「雫とり」とよばれている。浅い春に下村酒造店の店頭を飾る「奥播磨 袋吊り雫酒・責め」がそれにあたる。

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「瓶火入れ」と熟成

酒には菌や酵素が生きていて発酵しつづけるため、搾った後に火入れが施される。60度から65度に加熱することで、酒に残った菌は死滅し酵素は死活する。味が安定し、常温での流通や保存が可能になる。一般的な火入れには「プレートヒーター」が使われる。パイプに通した生酒を外部からお湯で加熱する方式で、蛇のようにくねくねと折れ曲がった配管は蛇管(じゃかん)と呼ばれている。タンクからくみ上げられた生酒は蛇管(じゃかん)を通る間に殺菌され、タンクに貯蔵される。

火入れは酒の劣化を防ぐ優れた技法だが、搾りたての爽やかな味が失われるという一面を持っている。鮮度と安定を両立させる方法に「瓶火入れ」がある。酒を入れた瓶ごと殺菌する方法だが、単純にみえて実に手間がかかる。内部まで殺菌に適切な温度にするために、水から湯を沸かす必要がある。殺菌後は瓶の破損を防ぐため、ぬるま湯、冷水、氷水の順に冷却していく。ぐずぐずしていると余熱により日本酒の味が悪くなる。すばやく、しかも均一に冷やすために、瓶をたえずくるくる回転させながらの作業になる。 「下村酒造店の火入れ酒は7種類です。すべて瓶火入れで1年以上熟成させています。」

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高いクオリティ 優れた再現性

通常火入れは、貯蔵用タンクに入れる前と瓶詰めのときの2回行われる。生貯蔵酒と書かれているものは、貯蔵前の火入れをせず、瓶詰め時に火入れされたものをさす。生詰め酒は、貯蔵タンクに入れる前に1回火入れした酒。火入れを全くしないものを生酒という。下村酒造店では、15種類の春夏秋冬の限定商品に3種類の通年商品を加え18種類の生酒がある。生酒の種類も多いが、もっと驚くのは20年間変わらないということ。

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7月11日に、夏を彩る純米吟醸「深山霽月(みやませいげつ)」が2018年のお披露目をする。山奥深い森にふりそそぐ鮮やかな雨上がりの月という意味合いだろうか。日本酒度プラス6の超辛口ながら、ほのかに甘く、ゆるやかな酸味が後から追ってくる。夏の山野草に似た苦味が絶妙な味わい深さを添える。7月28日の満月を肴に杯を傾けるのはどうだろうか?きっと、銘酒の名どおり曇りの一点もないさっぱりした心境を味わえるだろう。

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安富町産「兵庫夢錦」と林田川の水

「うちの蔵で造るのは、年間600石程度です。」日本で一年間に生産される清酒はおよそ2700万石。兵庫県下で日本酒の有名どころ灘の一蔵元生産高は5430石に達するが、全国平均生産量は870石という統計がある。決して大きな蔵元と言えないかもしれない。

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芳醇な酒ができるともてはやされる山田錦収穫高の6割を占める兵庫県下にありながら、下村酒造店は兵庫夢錦を使う。作付面積は山田錦の50分の1に過ぎないが、生産の中心は膝元の安富町。 「地元の米なので、水との相性がいいのです。」特に麹造りに違いがでるという。下村酒造店では兵庫夢錦を約70パーセント採用している。酒造りにたずさわる杜氏は5人。家訓である手造りの技、地産の酒造好適米と水そして気候、蔵人の和。それらが結集して下村酒造店の名酒が誕生する。

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日本酒は奥播磨に限ると言いきる人がいる。華美な衣装をまとい、挑発的に人の心をくすぐるわけではないが、楚々として台所の隅にたたずんでいる女に似ている。そして立ち振る舞いや、何気ない言葉の端に洗練された趣がある。酒好きを虜にしてやまない下村酒造店の地酒の秘密に少しだけ近づけた気がした。



蔵元名
株式会社下村酒造店
住所
兵庫県姫路市安富町安志957 MAP
直営本店定休日
年中無休
電話番号
0790-66-2004
直営本店営業時間
月曜日 ~ 土曜日 : 10:00~18:00
※日曜日は17:00閉店
ホームページ
下村酒造店公式ホームページ
駐車場
店舗前無料駐車場5台
大型車駐車可

ホタルと紫陽花の里「安富(やすとみ)」に真正面から日本酒造りにとりくむ蔵元がある。流行りに迎合することも、合理化に走ることもない。明治17年初代蔵元下村九郎兵衛(くろべえ)創業以来「手造りに秀でる技なし」の家訓を守り通してきた。

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伝統の技「佐瀬(させ)式圧搾」


「うちは創業以来、佐瀬(させ)式で上槽するのです。」と、下村酒造店の酒造りを話してくれるのは、7代目蔵元の下村元基(しもむらもとき)氏。 上槽とは、熟成した(もろみ)を酒と酒粕に分ける作業をさす。藪田式と呼ばれる自動圧搾が一般的になっている。アコーディオンの蛇腹を大きくしたような圧搾機に醪を流しこみ、両側から圧力をかけて酒を搾る方法。短い時間でしっかり搾れ、酸化がおこりにくく、酒の採れ高が多いという利点がある。酒粕はスーパーマーケットや量販店などで見かける板状になる。

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醪を縦横50センチ、20センチくらいの酒袋に移しかえ槽といわれる枠に並べ、上から圧力をかけて圧搾するのが佐瀬式。槽が船の底にているところから、「ふね搾り」や「ふな搾り」とも言う。一つずつ袋に詰めて、槽に並べるのは重労働であり、大変手間のかかる作業でもある。上からゆっくりと圧力をかけるので搾取時間もかかる。上槽に時間がかかるため、酒の酸化を抑える高い技術が要求される。

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「下村酒造所では、丸二日かけます。」 佐瀬式で搾られた酒は、日本酒本来の特色がよく引きだされ、雑味が少ない。時間差で荒走り、中取り、責めといった味合いの変わる酒が搾れる。酒質の違う魅力的な日本酒になるわけだ。実際に日本酒鑑評会に出品される日本酒は、よりゆっくり時間をかけた搾り方をする。酒袋を吊るし、自重だけで染み出てくる雫を採取する。市場に出回ることはごく稀で、「雫しぼり」または「雫とり」とよばれている。浅い春に下村酒造店の店頭を飾る「奥播磨 袋吊り雫酒・責め」がそれにあたる。

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「瓶火入れ」と熟成

酒には菌や酵素が生きていて発酵しつづけるため、搾った後に火入れが施される。60度から65度に加熱することで、酒に残った菌は死滅し酵素は死活する。味が安定し、常温での流通や保存が可能になる。一般的な火入れには「プレートヒーター」が使われる。パイプに通した生酒を外部からお湯で加熱する方式で、蛇のようにくねくねと折れ曲がった配管は蛇管(じゃかん)と呼ばれている。タンクからくみ上げられた生酒は蛇管(じゃかん)を通る間に殺菌され、タンクに貯蔵される。

火入れは酒の劣化を防ぐ優れた技法だが、搾りたての爽やかな味が失われるという一面を持っている。鮮度と安定を両立させる方法に「瓶火入れ」がある。酒を入れた瓶ごと殺菌する方法だが、単純にみえて実に手間がかかる。内部まで殺菌に適切な温度にするために、水から湯を沸かす必要がある。殺菌後は瓶の破損を防ぐため、ぬるま湯、冷水、氷水の順に冷却していく。ぐずぐずしていると余熱により日本酒の味が悪くなる。すばやく、しかも均一に冷やすために、瓶をたえずくるくる回転させながらの作業になる。 「下村酒造店の火入れ酒は7種類です。すべて瓶火入れで1年以上熟成させています。」

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高いクオリティ 優れた再現性

通常火入れは、貯蔵用タンクに入れる前と瓶詰めのときの2回行われる。生貯蔵酒と書かれているものは、貯蔵前の火入れをせず、瓶詰め時に火入れされたものをさす。生詰め酒は、貯蔵タンクに入れる前に1回火入れした酒。火入れを全くしないものを生酒という。下村酒造店では、15種類の春夏秋冬の限定商品に3種類の通年商品を加え18種類の生酒がある。生酒の種類も多いが、もっと驚くのは20年間変わらないということ。

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7月11日に、夏を彩る純米吟醸「深山霽月(みやませいげつ)」が2018年のお披露目をする。山奥深い森にふりそそぐ鮮やかな雨上がりの月という意味合いだろうか。日本酒度プラス6の超辛口ながら、ほのかに甘く、ゆるやかな酸味が後から追ってくる。夏の山野草に似た苦味が絶妙な味わい深さを添える。7月28日の満月を肴に杯を傾けるのはどうだろうか?きっと、銘酒の名どおり曇りの一点もないさっぱりした心境を味わえるだろう。

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安富町産「兵庫夢錦」と林田川の水

「うちの蔵で造るのは、年間600石程度です。」日本で一年間に生産される清酒はおよそ2700万石。兵庫県下で日本酒の有名どころ灘の一蔵元生産高は5430石に達するが、全国平均生産量は870石という統計がある。決して大きな蔵元と言えないかもしれない。

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芳醇な酒ができるともてはやされる山田錦収穫高の6割を占める兵庫県下にありながら、下村酒造店は兵庫夢錦を使う。作付面積は山田錦の50分の1に過ぎないが、生産の中心は膝元の安富町。 「地元の米なので、水との相性がいいのです。」特に麹造りに違いがでるという。下村酒造店では兵庫夢錦を約70パーセント採用している。酒造りにたずさわる杜氏は5人。家訓である手造りの技、地産の酒造好適米と水そして気候、蔵人の和。それらが結集して下村酒造店の名酒が誕生する。

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日本酒は奥播磨に限ると言いきる人がいる。華美な衣装をまとい、挑発的に人の心をくすぐるわけではないが、楚々として台所の隅にたたずんでいる女に似ている。そして立ち振る舞いや、何気ない言葉の端に洗練された趣がある。酒好きを虜にしてやまない下村酒造店の地酒の秘密に少しだけ近づけた気がした。



蔵元名
株式会社下村酒造店
住所
兵庫県姫路市安富町安志957 MAP
直営本店定休日
年中無休
電話番号
0790-66-2004
直営本店営業時間
月曜日 ~ 土曜日 : 10:00~18:00
※日曜日は17:00閉店
ホームページ
下村酒造店公式ホームページ
駐車場
店舗前無料駐車場5台
大型車駐車可

ホタルと紫陽花の里「安富(やすとみ)」に真正面から日本酒造りにとりくむ蔵元がある。流行りに迎合することも、合理化に走ることもない。明治17年初代蔵元下村九郎兵衛(くろべえ)創業以来「手造りに秀でる技なし」の家訓を守り通してきた。

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伝統の技「佐瀬(させ)式圧搾」


「うちは創業以来、佐瀬(させ)式で上槽するのです。」と、下村酒造店の酒造りを話してくれるのは、7代目蔵元の下村元基(しもむらもとき)氏。 上槽とは、熟成した(もろみ)を酒と酒粕に分ける作業をさす。藪田式と呼ばれる自動圧搾が一般的になっている。アコーディオンの蛇腹を大きくしたような圧搾機に醪を流しこみ、両側から圧力をかけて酒を搾る方法。短い時間でしっかり搾れ、酸化がおこりにくく、酒の採れ高が多いという利点がある。酒粕はスーパーマーケットや量販店などで見かける板状になる。

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醪を縦横50センチ、20センチくらいの酒袋に移しかえ槽といわれる枠に並べ、上から圧力をかけて圧搾するのが佐瀬式。槽が船の底にているところから、「ふね搾り」や「ふな搾り」とも言う。一つずつ袋に詰めて、槽に並べるのは重労働であり、大変手間のかかる作業でもある。上からゆっくりと圧力をかけるので搾取時間もかかる。上槽に時間がかかるため、酒の酸化を抑える高い技術が要求される。

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「下村酒造所では、丸二日かけます。」 佐瀬式で搾られた酒は、日本酒本来の特色がよく引きだされ、雑味が少ない。時間差で荒走り、中取り、責めといった味合いの変わる酒が搾れる。酒質の違う魅力的な日本酒になるわけだ。実際に日本酒鑑評会に出品される日本酒は、よりゆっくり時間をかけた搾り方をする。酒袋を吊るし、自重だけで染み出てくる雫を採取する。市場に出回ることはごく稀で、「雫しぼり」または「雫とり」とよばれている。浅い春に下村酒造店の店頭を飾る「奥播磨 袋吊り雫酒・責め」がそれにあたる。

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「瓶火入れ」と熟成

酒には菌や酵素が生きていて発酵しつづけるため、搾った後に火入れが施される。60度から65度に加熱することで、酒に残った菌は死滅し酵素は死活する。味が安定し、常温での流通や保存が可能になる。一般的な火入れには「プレートヒーター」が使われる。パイプに通した生酒を外部からお湯で加熱する方式で、蛇のようにくねくねと折れ曲がった配管は蛇管(じゃかん)と呼ばれている。タンクからくみ上げられた生酒は蛇管(じゃかん)を通る間に殺菌され、タンクに貯蔵される。

火入れは酒の劣化を防ぐ優れた技法だが、搾りたての爽やかな味が失われるという一面を持っている。鮮度と安定を両立させる方法に「瓶火入れ」がある。酒を入れた瓶ごと殺菌する方法だが、単純にみえて実に手間がかかる。内部まで殺菌に適切な温度にするために、水から湯を沸かす必要がある。殺菌後は瓶の破損を防ぐため、ぬるま湯、冷水、氷水の順に冷却していく。ぐずぐずしていると余熱により日本酒の味が悪くなる。すばやく、しかも均一に冷やすために、瓶をたえずくるくる回転させながらの作業になる。 「下村酒造店の火入れ酒は7種類です。すべて瓶火入れで1年以上熟成させています。」

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高いクオリティ 優れた再現性

通常火入れは、貯蔵用タンクに入れる前と瓶詰めのときの2回行われる。生貯蔵酒と書かれているものは、貯蔵前の火入れをせず、瓶詰め時に火入れされたものをさす。生詰め酒は、貯蔵タンクに入れる前に1回火入れした酒。火入れを全くしないものを生酒という。下村酒造店では、15種類の春夏秋冬の限定商品に3種類の通年商品を加え18種類の生酒がある。生酒の種類も多いが、もっと驚くのは20年間変わらないということ。

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7月11日に、夏を彩る純米吟醸「深山霽月(みやませいげつ)」が2018年のお披露目をする。山奥深い森にふりそそぐ鮮やかな雨上がりの月という意味合いだろうか。日本酒度プラス6の超辛口ながら、ほのかに甘く、ゆるやかな酸味が後から追ってくる。夏の山野草に似た苦味が絶妙な味わい深さを添える。7月28日の満月を肴に杯を傾けるのはどうだろうか?きっと、銘酒の名どおり曇りの一点もないさっぱりした心境を味わえるだろう。

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安富町産「兵庫夢錦」と林田川の水

「うちの蔵で造るのは、年間600石程度です。」日本で一年間に生産される清酒はおよそ2700万石。兵庫県下で日本酒の有名どころ灘の一蔵元生産高は5430石に達するが、全国平均生産量は870石という統計がある。決して大きな蔵元と言えないかもしれない。

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芳醇な酒ができるともてはやされる山田錦収穫高の6割を占める兵庫県下にありながら、下村酒造店は兵庫夢錦を使う。作付面積は山田錦の50分の1に過ぎないが、生産の中心は膝元の安富町。 「地元の米なので、水との相性がいいのです。」特に麹造りに違いがでるという。下村酒造店では兵庫夢錦を約70パーセント採用している。酒造りにたずさわる杜氏は5人。家訓である手造りの技、地産の酒造好適米と水そして気候、蔵人の和。それらが結集して下村酒造店の名酒が誕生する。

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日本酒は奥播磨に限ると言いきる人がいる。華美な衣装をまとい、挑発的に人の心をくすぐるわけではないが、楚々として台所の隅にたたずんでいる女に似ている。そして立ち振る舞いや、何気ない言葉の端に洗練された趣がある。酒好きを虜にしてやまない下村酒造店の地酒の秘密に少しだけ近づけた気がした。



蔵元名
株式会社下村酒造店
住所
兵庫県姫路市安富町安志957 MAP
直営本店定休日
年中無休
電話番号
0790-66-2004
直営本店営業時間
月曜日 ~ 土曜日 : 10:00~18:00
※日曜日は17:00閉店
ホームページ
下村酒造店公式ホームページ
駐車場
店舗前無料駐車場5台
大型車駐車可

ホタルと紫陽花の里「安富(やすとみ)」に真正面から日本酒造りにとりくむ蔵元がある。流行りに迎合することも、合理化に走ることもない。明治17年初代蔵元下村九郎兵衛(くろべえ)創業以来「手造りに秀でる技なし」の家訓を守り通してきた。

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伝統の技「佐瀬(させ)式圧搾」


「うちは創業以来、佐瀬(させ)式で上槽するのです。」と、下村酒造店の酒造りを話してくれるのは、7代目蔵元の下村元基(しもむらもとき)氏。 上槽とは、熟成した(もろみ)を酒と酒粕に分ける作業をさす。藪田式と呼ばれる自動圧搾が一般的になっている。アコーディオンの蛇腹を大きくしたような圧搾機に醪を流しこみ、両側から圧力をかけて酒を搾る方法。短い時間でしっかり搾れ、酸化がおこりにくく、酒の採れ高が多いという利点がある。酒粕はスーパーマーケットや量販店などで見かける板状になる。

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醪を縦横50センチ、20センチくらいの酒袋に移しかえ槽といわれる枠に並べ、上から圧力をかけて圧搾するのが佐瀬式。槽が船の底にているところから、「ふね搾り」や「ふな搾り」とも言う。一つずつ袋に詰めて、槽に並べるのは重労働であり、大変手間のかかる作業でもある。上からゆっくりと圧力をかけるので搾取時間もかかる。上槽に時間がかかるため、酒の酸化を抑える高い技術が要求される。

960IMG_7781.jpg

「下村酒造所では、丸二日かけます。」 佐瀬式で搾られた酒は、日本酒本来の特色がよく引きだされ、雑味が少ない。時間差で荒走り、中取り、責めといった味合いの変わる酒が搾れる。酒質の違う魅力的な日本酒になるわけだ。実際に日本酒鑑評会に出品される日本酒は、よりゆっくり時間をかけた搾り方をする。酒袋を吊るし、自重だけで染み出てくる雫を採取する。市場に出回ることはごく稀で、「雫しぼり」または「雫とり」とよばれている。浅い春に下村酒造店の店頭を飾る「奥播磨 袋吊り雫酒・責め」がそれにあたる。

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「瓶火入れ」と熟成

酒には菌や酵素が生きていて発酵しつづけるため、搾った後に火入れが施される。60度から65度に加熱することで、酒に残った菌は死滅し酵素は死活する。味が安定し、常温での流通や保存が可能になる。一般的な火入れには「プレートヒーター」が使われる。パイプに通した生酒を外部からお湯で加熱する方式で、蛇のようにくねくねと折れ曲がった配管は蛇管(じゃかん)と呼ばれている。タンクからくみ上げられた生酒は蛇管(じゃかん)を通る間に殺菌され、タンクに貯蔵される。

火入れは酒の劣化を防ぐ優れた技法だが、搾りたての爽やかな味が失われるという一面を持っている。鮮度と安定を両立させる方法に「瓶火入れ」がある。酒を入れた瓶ごと殺菌する方法だが、単純にみえて実に手間がかかる。内部まで殺菌に適切な温度にするために、水から湯を沸かす必要がある。殺菌後は瓶の破損を防ぐため、ぬるま湯、冷水、氷水の順に冷却していく。ぐずぐずしていると余熱により日本酒の味が悪くなる。すばやく、しかも均一に冷やすために、瓶をたえずくるくる回転させながらの作業になる。 「下村酒造店の火入れ酒は7種類です。すべて瓶火入れで1年以上熟成させています。」

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高いクオリティ 優れた再現性

通常火入れは、貯蔵用タンクに入れる前と瓶詰めのときの2回行われる。生貯蔵酒と書かれているものは、貯蔵前の火入れをせず、瓶詰め時に火入れされたものをさす。生詰め酒は、貯蔵タンクに入れる前に1回火入れした酒。火入れを全くしないものを生酒という。下村酒造店では、15種類の春夏秋冬の限定商品に3種類の通年商品を加え18種類の生酒がある。生酒の種類も多いが、もっと驚くのは20年間変わらないということ。

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7月11日に、夏を彩る純米吟醸「深山霽月(みやませいげつ)」が2018年のお披露目をする。山奥深い森にふりそそぐ鮮やかな雨上がりの月という意味合いだろうか。日本酒度プラス6の超辛口ながら、ほのかに甘く、ゆるやかな酸味が後から追ってくる。夏の山野草に似た苦味が絶妙な味わい深さを添える。7月28日の満月を肴に杯を傾けるのはどうだろうか?きっと、銘酒の名どおり曇りの一点もないさっぱりした心境を味わえるだろう。

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安富町産「兵庫夢錦」と林田川の水

「うちの蔵で造るのは、年間600石程度です。」日本で一年間に生産される清酒はおよそ2700万石。兵庫県下で日本酒の有名どころ灘の一蔵元生産高は5430石に達するが、全国平均生産量は870石という統計がある。決して大きな蔵元と言えないかもしれない。

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芳醇な酒ができるともてはやされる山田錦収穫高の6割を占める兵庫県下にありながら、下村酒造店は兵庫夢錦を使う。作付面積は山田錦の50分の1に過ぎないが、生産の中心は膝元の安富町。 「地元の米なので、水との相性がいいのです。」特に麹造りに違いがでるという。下村酒造店では兵庫夢錦を約70パーセント採用している。酒造りにたずさわる杜氏は5人。家訓である手造りの技、地産の酒造好適米と水そして気候、蔵人の和。それらが結集して下村酒造店の名酒が誕生する。

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日本酒は奥播磨に限ると言いきる人がいる。華美な衣装をまとい、挑発的に人の心をくすぐるわけではないが、楚々として台所の隅にたたずんでいる女に似ている。そして立ち振る舞いや、何気ない言葉の端に洗練された趣がある。酒好きを虜にしてやまない下村酒造店の地酒の秘密に少しだけ近づけた気がした。



蔵元名
株式会社下村酒造店
住所
兵庫県姫路市安富町安志957 MAP
直営本店定休日
年中無休
電話番号
0790-66-2004
直営本店営業時間
月曜日 ~ 土曜日 : 10:00~18:00
※日曜日は17:00閉店
ホームページ
下村酒造店公式ホームページ
駐車場
店舗前無料駐車場5台
大型車駐車可
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